「許されぬ想い」 最終話
なかなか糸口が見つからない雄一は再び樋口の家を訪ねた。仕事先を聞きたかったからだ。
辞めているにせよ会社名が解ったらそこから探せるかも知れないと考えた。
「奥様、ご主人のお仕事先はどちらでしたか?」
「はい、太陽建設でしたが・・・今年の初めぐらいに退職しました」
「そうでしたか。定年ではないですよね?それからどちらに移られたのでしょう?」
「不景気だとかで解雇になったようです。職を探す毎日でしたから・・・多分バイトぐらいしかしてなかったと思います」
「バイト?ですか。ご存じないのですか?」
「ええ、仕事を辞めてからは時々家にも帰らないような日があったりして、恥ずかしいのですが話す事も無くなってしまいましたので・・・」
「影山と言う男性の名前を聞いた事はありませんか?同じぐらいの年齢ですが」
「影山さん・・・同級生とかでしょうか?」
「失礼ですが中学とか高校の卒業アルバムとか見せて頂けたりしますか?」
「探せば見つかると思いますので少し待っていただければお持ちします」
「勝手なお願いをしてすみません。どうしても調べたい事がありましてお願いしているんです」
「そうでしたか・・・お掛けになってお待ち下さい」
奥方はそう言って奥に入り探し物をしていた。
数分ほどして一冊のアルバムを手に持って戻ってきた。
「高校のときのは見当たりませんでした。これは中学の時のものです」
「拝見させていただきます」
作品名:「許されぬ想い」 最終話 作家名:てっしゅう