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「舞台裏の仲間たち」 19~21

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 おばあちゃんの情報は
実にバラエティ豊かで、地元ならではという多彩ぶりでした。
北アルプスに抱かれて、雄大そのものの穂高の大自然と雰囲気を満喫して
今朝のわさび田に戻ってきた時には、すでに西の山頂に
日が落ちかけていました。
愛想よく招き入れられた食卓には、待ちかねていたように
すでに4人分の夕食がしっかりと整っていました。


 「何もありません。
 水が綺麗なだけで、他にとりえのない片田舎ですから
 地の物と、とれたての野菜だけです。
 年寄りにはこれで充分ですが、お若い人たちには
 すこし物足りないかもしれません。
 まずは、年寄りからの無理なお願いを聴き入れて頂き、
 本当にありがとうございます。
 こんなところまで足を運んでいただき、わたしどもも感謝にたえません。
 どうぞ、狭い家ですが、遠慮なさらずに、
 くつろいでください。」


 恐縮しているこちらが、拍子抜けをするほど、
老夫婦に歓迎をされてしまいました。
しかしその仔細な理由は、家庭料理で埋め尽くされた夕食を終えた後に、
ご主人によって解き明かされることになりました。

 「ばあさんの話は、やたらと長くなるし、
 おなご二人の雑談に付き合うのも、そのうちきっと
 退屈になるでしょう。どうですか、
 お近づきの印にその辺で、軽く。
 あとのことは、おなごたちに任せて、
 男どもは、ちょっと一杯行きましょう。」

 
 返事を待つまでもなく、
上着を着込んだご主人は、ゆるりと先に立って夜道を歩き始めます。
あわててこちらも上着を着込み、軽く二人に会釈をしてから
いそいで暗い夜道を駆けだしました。

 湧水の流れに沿って少しだけ下りました。
小さな橋を越えたところに、昼間は全く気がつかなかった、
ほとんど民家同然の可愛いお店が、暗闇の中から現れました。

 「年寄りの隠れ家です。
 何もありませんが、信濃のいい酒なら揃っています。」

 ご主人に促され、中に入って驚きました。
6畳そこそこの空間には、今日見てきたばかりの碌山美術館の
彫刻たちをスケッチしたものが、所狭しと飾られています。