「舞台裏の仲間たち」 19~21
「夜になったら、
たくさんの黒光の話を教えてあげるから、
是非、訪ねて来てくださいって、お呼ばれされちゃったの。
ねぇ、行きましょうよ、おばあちゃんの家。
駄目?
おばあちゃんのお話しって楽しんだもの、
茜の知らない世界が、突然、ぱっくり登場するんだよ。
聞きたいなぁ~黒光のはなし。」
「いいけど。
でも、おばあちゃん家の迷惑にならないかい?
二人で押しかけて、泊ったりして。」
「あら?
あたし泊るなんて言ったかしら・・・」
「もう、そう言う風に聞こえたよ。
たくさん話をしていたら、間違いなく群馬に
帰りそびれてしまうだろう。」
「さすがだわ、やっぱり!。
おばあちゃんの「読み」がぴったりと当ってる。
甲斐性が有りそうだからあの人なら、絶対に反対はしないって、
しっかりと太鼓判を押してくれたもの。
どうしてもだめな時の、
とっておきの秘策まで教えてもらったわ。」
「なんだい、それ?」
「近くに知人のペンションがあるから
そこを紹介すると言えば、完璧に落ちるからって・・・
そうおばあちゃんが、言っていました。」
「なるほどねぇ、
もうすっかり筋書きは出来ていたんだ。
やっぱりねぇ・・・。」
にっこりと笑った茜が、駐車場を振り返りました。
嬉しそうに飛び跳ねて、さらに背伸びをしながら両手で大きく丸い輪を作ります。
垣根越しに此方を見ていたおばあちゃんが、それにこたえて手を振ると、
それから私に向かって、丁寧に頭を下げてくれました。
(21)へつづく
作品名:「舞台裏の仲間たち」 19~21 作家名:落合順平