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ACT ARME2 訪問者と落し物

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「これ、あんたのモノなんでしょう?だったら自分の手で取り返しに来ることね。」
この言葉に対して
「君はこの期に及んでまだそんな屁理屈をいうのか!?」
と、レックは憤慨したが・・・
「ふむ、確かにその言葉には一理ありますね。」
「確かに。」
周りの連中が納得してしまっている。
「え?ちょっと、え!?」
混乱するレックに、ルインは労うように優しくぽんと肩に手を置き、
「頑張って!」
グッって親指を立てた。
「ちょっと、みんなどっちの味方なのさ!?」
「もちろんレックの味方に決まってるじゃないか。なにせレックは僕の依頼者なんだし。」
「いや、だったら―――――」
「頑張っていってらっしゃい。」
有無など言わせるはずもない。

そんなこんなで、レックとフィンドが対峙することになった。
「ねぇ。」
「ん?どした?」
「勢いでレックを戦わせに行っちゃったけど、勝てるの?」
その質問にルインは
「ん〜。まあ相手の実力がわからないから何とも言えないけど、大丈夫なんじゃない?」
と、非常に適当な回答をよこした。
「・・・本当に大丈夫なの?」
「まあ、いざとなったら割って入るし、あの女も言いたい放題やってるけど、人の命まで取るような外道には見えないし、大丈夫だと思うよ。」
ルインからそんな感じの評価を受けているフィンドは、レックに対して不敵な笑みを浮かべていた。
「あなた、なよっとした顔の割にはなかなかのツワモノじゃない。」
「ほめてくれてありがとう。」
「けど、残念でした。あなたじゃ私には勝てないわ。」
「その自信の根拠は?」
「そうねえ。あなたとわたしの戦闘術(スタイル)の相性ってところかしら!」
と、右手を後ろにやったかと思った直後、レックは上からの風圧を感じた。
危険を感じ、とっさに後ろに跳ぶレック。飛び退った後に、パシーン!という鋭い音が響く。
「やっぱりあなたはツワモノね。不意打ちの一発目を難なくかわすなんてね。」
そう言ったフィンドの手には、黒く長い鞭があった。
「どうも。でも、それを今の速さで振れるそっちも大したものだと思うよ。」
「あら、ありがとう。それじゃあもう少し味わってみる?」
そこからフィンドの鞭による連撃が始まった。それら全てを紙一重でかわしていくレック。だが、回避ばかりで攻撃に転ずることができない。



「あーもう、なんで攻められないのよ。むずがゆいなあ。」
そう一人でいきり立つアコを、ルインが解説付きで宥める。
「まあまあ。あの女も言っていたけど、相性が悪いんだよ。見ての通りレックは近接型、向こうは遠距離型だからね。どうあがいてもレックの攻撃が届かないんだよ。」
「じゃあ距離詰めればいいじゃない。」
「だからレックもそうしようとしてる。見てよ。」
フィンドが鞭を振るった瞬間をねらい、間合いを詰めようとするレック。
しかしフィンドは、その度にひらりと華麗に飛び退り、絶対に自分の間合いを崩そうとしない。
「ね?」
「う、うん。」
「まあ最初にも、あのゴミの山からひょいひょい下りてきたからね。身軽さとかに関してはレックより上かも。」
この点には納得したアコの次なる攻撃。
「だ、だったらあの鞭を切っちゃえば・・・」
「どうやって?レックの獲物は見ての通り打撃武器だよ。」
「う・・・・」
すでに雌雄を決したこの対決に、さらにツェリライが追い打ちをかける。
「さらに付け加えるに、あの鞭は靭(じん)性(せい)が優れている特殊素材で作られているようです。」
「つまり?」
「あれを切断しようとするのは、ルインさんでも骨が折れると思いますよ。」
「そうなんだ・・・」
「ほーんとに、ご都合主義かと思えるくらい相性最悪だね。さて、そんな相手にレックはどうやって立ち向かうのかな?心配だよ。」
「心配って言ってる割には、顔が楽しそうよ。」
「ん?そう?」
「ホントあんたって・・・」


「よけてばかりじゃ勝てないわよ!」
度重なる鞭打の嵐に、レックがしだいに押され始めた。すでに何発かもらってもいる。
そしてついにレックは壁際に追い詰められてしまった。
「残念ね。もう少し楽しみたかったけれど・・・」
フィンドが、鞭を振りかぶり
「これで終わりね!」
そして振り下ろした。


「やれやれ、仕方ないな。」
 

ボッ!
と、燃えるような音が聞こえた。そのあとに鞭の先端部分が切り落とされていた。
「えっ!?」
突然のことに全員が驚く。見るとレックの棒の先端には炎が灯っている。
「本当は使いたくないんだけど。怪我させちゃったらごめんね。」
さっきまでより少し怖い顔をしてレックが告げる。
「あなた、まさか・・・!」
フィンドが皆まで言う前に、レックが突っ込んでいく。得物を失ったフィンドには対抗するすべもなく、勝負はついた。

「いや〜、驚いた。レックは属性使い(アトリビューター)だったんだ。」
「う、うん。まあね。」
「あとりびゅーたー?」
アコが疑問を漏らす。その疑問に我らのツェリライが答える。
「このイーセでは、土・水・火・風・雷・木・闇・光と、八つの属性が存在しています。属性使い(アトリビューター)というのは、その属性のうちのどれかを操ることのできる人のことです。」
「ふ〜ん。誰でもそれになれるの?」
「いえ、基本的に本人の体質によりますね。たとえばルインさんは、戦闘技術に長けていますが、アトリビューターではありません。孔の絶対量が増やせないのと同じように、体質が合わない人はどうあがこうとアトリビューターにはなれないんです。」
「じゃあ、レックは火の属性の体質があったんだ?」
「そういうことになりますね。というより、あなたもそうではないんですか?」
「さあ、何のことかしらね?」
自分から質問する割には、人の質問はそっぽを向くアコであった。

「してやられたわね。隠し玉を持っているなんて、ずいぶんと策士じゃない。」
結構悔しそうな表情で言ってくるフィンドに、あまりいい顔をせずに返すレック。
「別に隠してたわけじゃないよ。ただ使いたくなかっただけだ。そんなことよりほら、傷を見せてよ。」
「え?」
「一応重症にならないように肩を打ったけど、それなりに力は込めたからね。簡単な怪我なら手当てできるから。ほら。」
予想しなかった相手の対応に、しばしぽかんとしていたフィンドだったが、すぐにハッとした表情になり、身構える。
「そうやって善人面しながら女の肌を直で見ようとするだなんて、やっぱあなたそのテの趣味がある変態策士なのね。」
「だから、そんな趣味はないよ。」
「う わ ぁ」
「・・・・・無いって言っているんだけどなあ。」
「わかったよ。そんな怒んないで。」


「これでよしと。まあすぐに戦闘とかは無理だけど、普通に動く程度には問題ないはず。」
手当てを終えたレックの顔は、先ほどまでと比べて少しばかり明るい。
「一応聞いておくけど、あなたがこんなことする理由はあるの?自分の持ち物を泥棒した揚句に、襲ってきたのよ?普通だったらフルボッコにしたっておかしいことじゃないはずよ。」
思わずそんな質問をしてきたフィンドに、レックはまた嫌そうな顔をする。