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ACT ARME2 訪問者と落し物

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と、いつものごとくルインとツェリライがやり取りをしている間に、レックが話を進め始めた。

「それで、この町に落としたものを探しに来たんですけど。あなたがこの町に落ちていたものを集めているって話を聞いたので・・・」
「フィンドでいいわよ。それで、あんたの落し物があるかもしれないと思ったのね。いいわ、好きに探しなさい。」
だが、その言葉とは裏腹に、フィンドは話し終えると同時に手を出す。
おずおずと聞くレック。
「・・・・えっと、なんですか?その手は。」
けろっと返すフィンド。
「え?何って、決まってるじゃない。入場料。」
「ここって、美術館とかじゃないんですよね?」
「なに寝ぼけたこと言ってんのよ。いいから入場料1000セラ払って。」
「高っ!?ぼったくりもいいところじゃん!」
憤慨するレックに、フィンドも負けじと言い返してくる。というか、逆ギレしてきている。
「仕方ないじゃない!!収入が入ってくる回数が少ないんだから、一回の収入を増やすのが道理でしょ!」
「いや何その暴論!」
「なによ!間違ったことは言ってないでしょ!」
「間違ってないけど間違ってるよ!!」
そのままギャースカ口げんかを始めた二人を、三人はほのぼのしたまなざしで眺めていた。
「い〜や〜。なんかいいね。微笑ましい兄妹げんかを見てるみたいで。」
<なによ!どこが間違っているのか、わかりやすく説明してみなさい!!
「そうね〜。」
<お客さんが入ってこないなら、PR活動でも何でもして、少しでもお客さんが入ってくるようにするべきでしょうが!
「しかし、収入の回数が少なければ一度の収入の額を増やせばいいとは。その発想はなかったですね。普通は収入の回数を増やそうとするはずなんですが。」
<なんでそんな面倒な事をしなきゃならないのよ!
「いや、僕はその気持ちはなんとなくわかるな。   ・・・なに、その蔑むような目は?」
<面倒って、それじゃあお客さんが全く入ってこなくなるでしょうが!       ってあれ?これ・・・・
「同類憐みの眼差しです。」
その言葉通り、その眼にいっぱいの憐みを込めた視線を直視できなかったルインは、顔をそむけた。そこで、どうやら兄妹げんかに進展があったことに気づく。
「あれ?どうしたんだろう?」

見ると、レックがフィンドの右手を凝視している。
「何よ。あんた、そのテの趣味があるの?」
「何いってんのさ。ないよ、そんな趣味は。」
「う わ ぁ。」
「だからそんな趣味はないってば!そうじゃなくて、見てよこれ!」
そう言って、レックはフィンドがつけているリストバンドを指さす。
「これ、ボクのだよ。」
レックは、えらく自信満々に宣言する。それを聞いた三人は、どうしてだか知らないが不安になったので、一応確かめておく。
「間違いないの?」
「うん、間違いないよ。だってここにほら、『H&L』って刺繍があるもん。」
「それがたまたま同じものだという可能性は?」
「ほとんど無いよ。  だってこれは、母さんに作ってもらったものだから。同じものは二つとないはず。」
そこまで聞き遂げたルインは、フィンドに言い渡した。
「だってさ。それは持ち主がいたんだから返してほしいな。」
「嫌。」
一言バッサリ。
「・・・・・・は?」
「これは、私が気に入っているから非売品なの。売ることもできないわ。」
「そういうことを言ってるんじゃないの。持ち主がいたら持ち主に返すのが常識でしょうが。」
「うるさいわね。嫌って言ってるでしょう。」
まったくもって頑固である。しびれを切らしたツェリライが、強硬手段にでる。
「なら仕方ありません。こちらも然るべき手段をとらせていただきます。あなたを窃盗罪で治安部隊に通報するとしますか。」
そう言って携帯を手にしたツェリライに対して、フィンドは不敵な笑みを浮かべた。
「させると思ってるの?」


その言葉と同時に、わらわらと人が湧いてきて、四人の周りを囲んだ。
「何さ!この集団!?」
「私のボディーガード。何か知らないけど、勝手によってきてくれたのよ。」
「やれやれ、とんだわがまま女だね。」
「というより、なんでこんなにボディガードがいるのさ?」
「あーあ、なんでこうなっちゃうのかしら。ま、いいっか。ねえ、レックは武器持ってるけど、強いの?」
その質問に対しては、自信なさげに答えた。
「う〜ん。戦えないことはないけど、強いかどうかは・・・。」
だが、アコとっては自信など関係ない。
「そ。じゃあ、ルインと二人で頑張ってね。」
「え?アコは戦わないの?」
「何よ。かよわき女の子に戦わせようというの?そんなんじゃモテないわよ。」
「・・・・・・。」
「とにかく、あたしとツェルは戦えないから。がんばってね♪」
「うん。わかったよ。」
「(戦えないねえ・・・。まあいいけど。)というわけで、気は進まないけど、駄々っ子の躾は僕とレックの二人ですることにするよ。」
「わたしはこれでも成人してるんだけど?」
「精神的には十分お子ちゃまだから問題ないね。なんならあやしてあげようか?」
ルインの口撃に、若干カチンときたようだが、すぐに取り直し、言葉を返してきた。
「そう、それじゃあまずはこいつらからあやしてもらおうかしら?」
「お安い御用だね。」
「かかりなさい!」


強いかどうか自信がないとか言っていた割には、レックはなかなかに強かった。きちんと自分の身体能力と武器との相性があっていて、相手からの動きに柔軟に対応している。
「レックさんは、なかなかの手練みたいですね。」
「そうなんだ?確かに強いように見えるけど、詳しいことはわからないからなあ。」
「ええ、あの舞うようなアグレッシブな動きで大勢の相手に対応しながらも、しっかりと向かってきている相手を捉え、それに対する最適の動きをみせてます。」
「ふーん。」
「おそらく、バランス感覚と柔軟性に優れているのでしょうね。あの戦闘スタイルは、見ていて楽しいものがあります。」
「ふ〜ん。」
「・・・・やはり、興味ありませんか?」
「うん、まあね。」
と、レックの周りから一斉に攻撃が飛んできた。四方からの攻撃に対し、レックは棒を立て、その上に逆立ちするような状態になり攻撃を回避。
「はぁっ!」
気合の一声。
そのまま体を大きくひねり、足と棒の両方で敵を一蹴した。
その様子を見ていたルインは感心した声を上げる。
「なんだ、結構すごいじゃん。見た目なよってしてたから、護身術程度の強さしかないと思ってたよ。」
「それは褒めてるの?それとも貶しているの?」
「両方。なんかレックってイジリがいありそうでさ。ついね。」
「ひど。何さその理由!?」
レックの抗議は、当然ながらルインの耳には届かない。

そして、すべてのボディーガードを倒した二人は、再びフィンドに詰め寄る。
「さて、約束通り全員あやしてあげたよ。とっととそれ返して。   ――――それとも、自分もあやしてもらいたいのかな?」
フィンドは、目の前であっさり倒されていったボディーガードたちの姿を見て驚いていたようだが、やがて不敵な笑みを浮かべると、ひらりと後ろに跳躍し、レックに宣戦布告をしてきた。