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ACT ARME2 訪問者と落し物

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質問に対してすべてNOの返答に、うーんと唸りながらソファにもたれかかる。
「・・・となると、手掛かりは一切なしか。困ったね。いくらなんでもこの町全域をローラー作戦で探すわけにもいかないし、最悪誰かが拾って捨てた可能性もある。」
「そんな!!」
「もちろん、それを見つけるためにこんなとこに来るぐらいだから、レックにとっては大事な宝物かもしれないけど、他の人からすればただのリストバンドだしね。」
その言葉を聞いたレックは、シュンとうなだれる。
「そうですよね。見つかるわけがないか。そもそも自分が落としてしまったわけだし、仕方がないことですよね。」
突然、スイッチが入ったかのように諦観モードへと切り替わったレックに、ルインがあわててフォローに入る。
「いやいやいや、その可能性があるってだけで、決まったわけじゃないから。」
「でも、もうすでにその可能性が実際に起こっているかもしれない。」
「でも、まだその可能性が実際に起こっていないかもしれない。」

レックの呟きに即答するルイン。
「可能性を考えるなら、いい可能性を考えたほうがいいでしょ?」
と、なぜか自信満々の笑みを浮かべているルインをポカンと眺めているレックに、アコが横から口をはさむ。
「諦めたほうがいいわよ。ルインは基本的にグータラだけど、一度やると言ったら自分の気が済むまでやり通すヤツだから。えっと、こういうのを何ていうんだっけ?確か『ゆうゆうじっこう』っていうのよね。」
「え?」
「え?」
「え?」
アコとレックとルインの「え?」が見事にシンクロし、しばし膠着する。それを打ち砕いたのは、ツェリライの冷静な突っ込みである。
「アコさん。それを言うなら『ゆうげんじっこう』です。」
「あ、あれぇ?そうだったっけ?いつの間に変わっちゃったの?」
「有言実行という言葉ができた後、この言葉は一度たりとも変わっていないと思いますよ。」
全く、せっかくいい感じの話になっていたのに台無しである。

「さて、具体的にはどうしようかなあ。」
と白々しく言いながら、がっつりツェリライに視線を向けるルイン。一分八秒ほど気付かないふりをしていたツェリライだったが、根負けしたようだ。話を切り出す。
「やれやれ、少しは自分で調べるということを覚えてほしいものですね。」
「これが適材適所ってやつだよ。」
グッと親指を立てるルインに、何かものすごく言いたそうな顔をしたが、何を言ったところで無駄だということは、本人がよく知っていることなので諦める。

「『拾い屋』はご存知ですか?」
「拾い屋?何それ知らない。」
眼鏡を上げつつ説明を始める。
「拾い屋は、道端などに落ちていたものを拾い集め、それを売ることを生業にしている商売のことです。」
「へぇ〜。知らなかった。いい商売だね、それ。」
「それで、ボクが落とした物もそこにあるかもしれないということですか?」
元気を取り戻したレックの質問に、ツェリライがうなずく。
「ええ。その可能性は十分に考えられます。以前紙袋も扱っているという話も聞きましたし。」
「まじで?それはまたすごいな。確かに、そこならレックのリストバンドも見つかりそうだね。行ってみようか。アコちゃんはどうする?」
そう聞かれた前回欠席のアコは、今回は同行するようだ。
「うん、なんかそこ面白そうだし、暇だから行ってみようかな。」
「よし、じゃあそうと決まれば行きましょうか!」
かくして、四人は拾い屋へ向かうこととなった。


「――――じゃあレックは小さいときから風来坊やってるんだ。」
「はい、まあそうですね。」
「ふ〜ん。あ、そういえばあたしに敬語使わないでいいわよ。別に。」
「え?でも。」
「だってほとんど同い年でしょ?そんな気を使う必要ないって。それにあたしはあの何でも屋の一員じゃないし。」
「え?そうなんですか?」
「そうよ。あたしたちはただこのずる賢いグータラに付き合わされているだけなんだから。だから、タメでいいわよ。」
そう言って笑いかけるアコに、レックも笑顔で返す。
「うん、わかった。ありがとう。」
「同様の理由で僕に対しても敬語を使う必要はありませんよ。」
「同様の理由じゃないけど、僕にも敬語使わなくていいから。」
「レックさんはともかく、あなたは敬語を使うべきなんですけどね。」
「そう固いこと言わない。気楽なほうがいいって。」
「あのー、ちょっといいかな?」
「ん?何?」
のんきにレックの方を見たルインは、レックが指さすほうを見て理解する。
指差したほうには『拾い屋 ひろっちゃん  ゴミみたいなものから思わず手を伸ばしちゃうほどの骨とう品もあるかもよ!』という看板が飾ってあった。
「あ、ついたっぽいね。」
「ですね。入ってみましょうか。」


「お邪魔しマース。」
中に入る。ぶっちゃけ中はかなり雑然としている。だだっ広い倉庫のような建物。人がいる雰囲気はしない。
「誰かいませんかー?」
若干、あきらめが混じった声で呼びかける。
「誰か呼んだ?」
と、ルインの呼びかけに応じる声が、どこからともなく聞こえてきた。
「え?今どこから声が聞こえたの?」
アコがせわしなく視線を動かし、声の主を探したが見当たらない。
「ここよ、ここ。」
と、建物の奥にあるゴミ、じゃなかった商品の山の中からひょっこりと顔を覗かせる姿があった。
 見た目は結構可愛い。可憐という言葉がお似合いの整っていて綺麗な顔をしている。
 だが、格好がひどい。あの服は一体最後の洗ったのはいつなのだろうか?そんな疑問を抱かせる状態である。
 「うわっ、汚っ。」
 思わず本音をこぼしたアコに、店主は機敏に反応する。
 「汚いとはご挨拶じゃない?この店の制服なのよ、これ。」
 そういうと、軽やかにゴミ、じゃなくて商品の山を軽やかにひょいひょいと飛び降りてきた。
「いや、どう見てもこじつけにしか・・・」
レックが皆まで言う前に、顔の前に指をさして止めさせる。
「いちいちうるさい男ねえ。そんなんじゃ一生女なんて出来ないわよ。」
グッと言葉に詰まったレックを見た店主はにやりと笑い、要件を聞いてきた。

「それで、なんの用?冷やかしじゃないわよね。なるべく早くお願い。昼寝の続きしたいんだから。」
「これって商売になるの?」
思わず要件より先にどうでもいいことを質問するルイン。
「何?そんなどうでもいいことを聞きに来たの?」
「いや、そうじゃないけど思わず。」
「えっと、ボクたちはここにあるかもしれないものを探しに・・・」
「正直儲かってないわよ。全然。」
またレックが皆まで言う前に話をする店主。
「(結局話すのかよ!?)あー、やっぱそうなんだ。」
「何『ちっ、儲かる商売なら自分もしようかなと思ってたのに』という顔をしているんですか?」
「ウェッ!?い、いや。そんなこと考えてないよ?」
とか言いつつ、明らかに動揺している。それを見て、ツェリライは、冷たく突き放した。
「まあ、その時はあなたの自由にすればいいですが。絶対に、たとえ天地が裏返しになろうと、僕は手伝いませんからね。」
「ぐぅ・・・。   でもまあ、儲からないみたいだし、やるつもりはないけどね。」
「それは結構なことです。」