「舞台裏の仲間たち」 16~18
「ほら。よく見えないんだろう・・・」
笑いながら、茜にメガネを手渡しました。
茜は実は、極度の近視です。
仕事の時にはコンタクトレンズを用いていますが、
普段は負担を避けて眼鏡をかけていました。
それも、今回のドライブで初めて知ったことのひとつです。
「長時間使うと目が疲れるの。
厚いレンズすぎて少し重いけど、やっぱり眼鏡の方が楽。
でもみんなは、いい歳をしているくせに、
妙に可愛くなりすぎるって大笑いをするの、
ドクタースランプ、アラレちゃんみたいだって。
失礼だわよね~」
「そんなに酷くはないさ、
でも確かに、色気には少し欠けるけど。」
「褒めてくれないの?
初めてあなたに、めったに他人には見せない
眼鏡姿を披露したというのに。
私にしてみれば、これはスッピンと同じことなのよ。
スッピン美人は、嫌いですか。」
「スッピン美人か・・・
うん、そんな素敵な言い方も有るね。」
■『Dr.スランプ アラレちゃん』(ドクタースランプ -)は、
鳥山明の漫画『Dr.スランプ』を原作とするテレビアニメ作品。
1981年(昭和56年)4月8日から1986年(昭和61年)2月19日まで、
フジテレビ系列で水曜日19:00 - 19:30に放映され、
映画化もされました。
茜は、次第に朝もやまで立ち込めてきた、
わさび田から目を離さず、なかなか立ち去ろうとはしませんでした。
夜明け特有の寒気にこちらの身体も冷えてきたので、車へ戻り
後部座席から厚手の上着をとり出すと、再び茜のもとへ引き返して、
それをすっぽりと頭からかけてやりました。
「ねぇ、もう少し寄って。
ついでに、温めてよ。」
言われたままに、背後から接近する形で
茜の身体を抱きしめました。
ぶるっとひとつ身震いをした茜が、もうすっかりと慣れた仕草で、
私の方へ全体重をかけて寄りかかってきました。
(18)へつづく
作品名:「舞台裏の仲間たち」 16~18 作家名:落合順平