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ゾンビ・ウォーク

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俺は蹴飛ばさんばかりの勢いでドアを開けた。ドアの向こうには、打ちっぱなしのコンクリートで覆われた屋上が見えていた。周囲を金網で囲われただだっ広いだけの場所だった。
俺はスマホのマップを見た。目印の赤い旗は、明らかにこの屋上の中央に立っていた。
 ―― ミッションをクリアしたのか?
 ―― これで終わったのか?
だが、背後から大量のゾンビどもの低い唸り声が迫って来る。 俺はゾンビの唸り声に押されるように、よろめきながら屋上に足を踏み出した。
吹きっさらしの校舎は強い風が吹き付け、校舎の背後には、鬱蒼とした木々に覆われた山の黒い巨大な影が迫っていた。俺はよろよろと屋上の中央に進んだ。
「なぜだ! ミッションはクリアしたぞ! なぜ終わらない!」
俺は空に向かって大声で叫んだ。しかし、返って来たのは、大勢のゾンビが漏らす低い唸り声だった。俺は今出てきたドアを振り返った。そこからは、わらわらとゾンビが溢れ出していた。
スマホからは警告音が鳴り響き続けていた。俺はじりじりと屋上の端に追い詰められて行った。先週、ここから飛び降り自殺をしたという学生のことが頭に浮かんだ。手にはスマホを握りしめていたという、妻の言葉が耳に蘇った。
 ―― その学生は、面接先からの内定通知を待っていたんじゃない。
 ―― その学生もきっと、ゾンビ・ウォークをしていたんだ。
 ―― こうやって追い詰められて、ここから飛び降りたんだ!
疑念はどんどん頭の中に膨らんでいった。そして、俺も学生と同じように、屋上から飛び降りてまっさかさまに校庭に落ちて行くシーンが、脳裏にありありと浮かんだ。
 ―― いやだ、俺は絶対に飛び降りたりなんかしないぞ!
俺は必死で考えた。そして、ついに一つの仮説に突き当たった。
 ―― ゾンビが現れるときには、必ずその前にアラームが鳴る。
 ―― これはアプリがゾンビの出現を教えてくれていたのだろうか。
 ―― ひょっとしたら、むしろ、アプリがゾンビを生み出していたんじゃないだろうか。
そこまで考えた俺は、一つの賭けに出ることにした。どうせこのままじゃ、ここから飛び降りて死ぬだけだ。
作品名:ゾンビ・ウォーク 作家名:sirius2014