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ゾンビ・ウォーク

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膝に手をついて息を整えていると、スマホからいやな音が響いた。ぎょっとして画面を見ると、階段のすぐ下にゾンビの表示が現れていた。鳴り響く警告音とともに上から下の階段を覗き込むと、ゾンビが一匹階段を上がって来る。俺はドアを思いっきり蹴とばしたが、ドアは見た目以上に頑丈なようだった。後ろを振り返ると、階段からゾンビの頭が現れるところだった。俺はやけくそになって、手にした消火器を振り上げると、階段を上るゾンビに駆け寄り、その頭に消火器を目一杯叩きつけた。
ゾンビは階段を転げ落ち、動かなくなった。スマホの警告音も鳴り止んだ。俺は肩で息をしながら、消火器を傍らに置いて、階段に座り込んだ。ナイキのニットキャップを頭からむしり取って、手に握りしめる。
 ―― さて、これからどうする。
動かないゾンビを見ながらそう自問したとき、あることに気が付いた。ゾンビの服装だ。ゾンビは、警備員の服を来ていた。
 ―― もしかしたら・・・
俺はそう思うと、ナイキのニットキャップを被り直し、怖々ゾンビに近づいた。気持ちが悪いのを我慢して、できるだけゾンビを見ないようにしながら、ゾンビが穿いている警備服のズボンのポケットを探った。
 ―― あった!
ゾンビのズボンのポケットには、鍵束が入っていた。おそらくこのゾンビは、この中学校の警備員だったのだろう。中学校に警備員がいるとは、あまり聞いたことが無いが、先週この中学校に入り込んだ学生が自殺したことから、今だけ特別に雇っていたのかも知れない。
俺は鍵束の鍵を、屋上に続くドアの鍵穴に一つずつ合わせていった。しかし、鍵の数が多く、なかなか鍵穴に合う鍵が見つからない。きっとこの鍵束の中には、体育館の鍵とか音楽室の鍵とか校長室の鍵とか、そういった諸々の鍵がごちゃ混ぜになっているのだろう。俺はだんだん腹が立ってきた。
 ―― マスターキー1本にしろよ、まったくもう!
そのとき、スマホからけたたましくアラームが鳴り始めた。スマホの画面を確認すると、背後の階段を大量のゾンビが登って来る。鍵の多さに腹を立てている場合じゃない。俺はさらに焦った。手が震えて鍵がカギ穴に入ってくれない。なんとか鍵穴に鍵を押し込んでも、なかなか鍵は合わない。しかたなく分厚い束のカギを次々にドアのカギ穴に合わせて行く。スマホから鳴り響くアラームのボリュームがどんどん大きくなる。振り向いて階段を見ると、ゾンビの頭が現れ始めている。ゾンビどもの低い唸り声が重なり合って聞こえて来る。
しかし俺は、鍵束の鍵の最後近くで、やっとドアの鍵穴にあう鍵を見つけた。俺は鍵穴に差し込んだ鍵を、急いで回した。鈍い手応えと同時にガチャリという音がして、鍵が開いたのがわかった。
 ―― やった! 開いたぞっ!!

作品名:ゾンビ・ウォーク 作家名:sirius2014