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ゾンビ・ウォーク

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俺はとうとう中学校の校門にたどり着いた。
中学校の校舎は、真っ黒な山を背後に背負い、夜の闇の中にうずくまっていた。俺はその光景に不吉な予感を感じながら、スマホの画面に目を落とした。縮尺が細かくなったゲームのマップには、目的地が校舎の中であることが示されていた。
この不気味な夜の校舎に入り込むのは気が進まなかったが、自分が助かる唯一の道が、この校舎の中に通じているのなら、好き嫌いを言える状況ではない。
 ―― どうやって校舎に入る? ええい、ままよ。なんとかなるだろう。
俺は校門によじ登った。校門の上にまたがって座った状態で、今来た国道の方を眺めると、何十匹というゾンビがこちらによろよろと向かって来るところだった。
驚いた俺は、思わず校門から転落していた。落ちた際に腰を打ちつけた俺は、しばらく立ち上がれなかったが、痛がっている時間はない。俺は腰をさすりながら、校舎のドアによたよたと向かった。
校舎のドアは、ロックされていた。当然だろう。先週、勝手に校舎に入りこんだ学生が自殺したばかりだ。俺はドアの前に置いてあった、ドアストッパー用と思われるコンクリートブロックを拾い上げると、ドアのガラスに思い切り叩きつけた。器物破損だとか、不法侵入だとか、そんなことを気にしている場合ではないのだ。俺は割れたガラスからドアの内側に手を突っ込み、ロックを解除した。そのまま校舎に入り込むと、ドアを背にしてその場にへたりこんだ。スマホを取り出して、改めてマップを確認する。かなり目的地に近付いたためか、マップは3Dで表示されるように変わっていた。マップをチェックした俺は、目標の旗が屋上にあることを確認した。立ち上がりながら、ドアの割れたガラスから外に目をやると、どこから入り込んだのか、大量のゾンビが校庭を徘徊していた。
俺は喉をゼイゼイ鳴らしながら、階段を上った。
 ―― この程度体を動かしたくらいで、情けない。もっと早く運動をしているんだった。
俺は、今こんな後悔をしても仕方が無いと思いながらも、自分の膝を励ましながら階段を上がった。
やっと最上階の屋上に通じるドアにたどりついた俺は、ここでも途方に暮れた。当たり前だが、このドアにも鍵がかかっていた。俺はドアの脇にあった消火器を持つと、それを思い切りドアに叩きつけた。すさまじい金属音が辺りに響く。しかし、ドアはびくともしなかった。
作品名:ゾンビ・ウォーク 作家名:sirius2014