小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゾンビ・ウォーク

INDEX|6ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

 ―― そんな・・・やっとここまで来たのに・・・
俺は絶望感に捉われた。だが、俺は妻や両親のことを思い浮かべた。
 ―― いや、せっかくここまで来たんだ。絶対なんとかしてみせる!
闘争心が湧きあがってきた。
 ―― そうだ、俺はピンチになるほど燃える男だ!
俺は気分が妙に高揚してくるのを感じながら、周囲を見回した。
今いる国道は、小高い山の中腹を横切っていて、道の北側は上に向かう山の斜面で、南側は急な下り坂となっていた。下り坂はおよそ20メートルほど下で、住宅街となっている。国道の歩道と下り坂の間には、転落防止用の2メートルほどの高さのフェンスが張られている。それを見たとき、俺は閃いた。
 ―― やつらはフェンスなんてよじ上れないだろう。よし、フェンスを乗り越えて向こうの斜面伝いに進もう。
俺はフェンスに飛び付くとよじ上り、乗り越えて向こう側の斜面に降り立った。そのまま斜面を歩き始める。地面が柔らかく、さらに傾斜がきつくて、ともすれば足を掬われそうになるが、なんとかよろめきながら進む。
ほどなく、ゾンビの群れがフェンスに押し寄せて来た。俺は斜面伝いに歩いているため、歩く速度が上げられず、ゾンビ達はフェンス沿いに俺の動きに付いて来る。俺はこのまま中学校の近くまで行けたとしても、どうやって斜面から国道に戻るか、悩み始めた。そのとき、俺は恐ろしいものを見つけてしまった。10メートルほど先で、歩道と斜面の間のフェンスが途切れていた。俺は焦った。しかしこれ以上速く歩くことはできない。そしてすぐにフェンスの切れ目から、ゾンビがわらわらと斜面に降り始めた。
 ―― もうだめか!
俺は観念しそうになった。しかし、まだ天は俺を見離していなかった。
ゾンビの腐った脚には、この斜面の傾斜はきつ過ぎたのだ。斜面に足を取られたゾンビは、次々に転び、そのまま斜面をすべり落ち、あるいは転がり落ちていった。俺は、上から滑ったり転がったりして落ちてくるゾンビを避けるのが忙しくなった。
 ―― あれ、昔こんなゲームがあったような気がするぞ。
必死にゾンビをかわしながら、そんなことを思い出していた。
 ―― そうだ、アーケードゲームでよく遊んだドンキーコングだ。
思い出しながら、俺は思わず自分自身の姿がおかしくなった。
最後の一匹のゾンビが、滑り落ちながら俺の脚にしがみついてきた。俺はそいつの頭を思い切り蹴り飛ばした。そいつの体はそのままずるずると斜面を滑り落ちて行き、ちぎれ飛んだ頭は、ごろごろと斜面を転がって、坂下の住宅の屋根で一度大きく弾んでから、その家のベランダに飛び込んだ。
「ナイス シュート。」
俺は思わずつぶやいたが、そんなことを言っている場合ではなかった。
ゾンビの頭がベランダに飛び込んだ家から、甲高い女の悲鳴が上がるのを背後に聞きながら、俺は斜面から国道に戻り、急ぎ足で歩きだした。
作品名:ゾンビ・ウォーク 作家名:sirius2014