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終焉で見えた原点

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普段交信の無い兄から連絡が入った。

「父が危篤」だと。

駆けつけると父はミイラのようにやせ細り、息も絶え絶えだった。

「この3〜4日飲まず食わず」なのだと言う。

私の声で目覚めた父は目を開けて泣きそうになる程喜んでくれた。

僕の差し出した手を取って乾いた口で何度もキスをしてくれた。

僕は初めて父から直接的な愛情を感じられた瞬間だった。

僕はその父の勇気ある行為に背中を押され「今まで育ててくれてどうもありがとう」と

初めて感謝の気持ちを言葉にすることが出来た。



父は頷いて、何か言葉を発してる。乾いた喉や舌のせいか、言葉が上手く発せられず伝えられないことにイライラしてる。

聞き取り難い言葉を何度も聞き返すとそれはなんと「Thank you」だった。


お洒落だった父の自慢は拘りと英語力。それを駆使して世界に最高品質の商品を売って来た。三つ子の魂は百までも。


僕の人生はこの瞬間からより明るくなった。


翌日父は息を引き取り、死に目に会えなかったけど、僕は幸いにして貴重な言葉を死に際の父と交わせることが出来た。






作品名:終焉で見えた原点 作家名:淡水