エイユウの話 ~秋~
「君はラジィを見てなかったの?」
「え・・・」
混雑は彼らを避けて移動していく。それでも多くの生徒とぶつかって、キースのフードが脱げた。中から金色の美しい髪が、夜闇とちょうちんで輝いて見える。そしてそれは、威圧感まで生み出していた。
座り込んだキサカに手を貸すこともなく、上から怒鳴りつけた。
「君はラザンクール・セレナという女の子を見てなかったのかって聞いてるんだ!」
大きな声だったのに、雑音に紛れてすぐに消えてしまった。それでも、怒鳴られた当人にははっきり聞こえている。キサカは鳩が豆鉄砲を食らったような表情で、キースを見た。
「何・・・言ってんだよ?」
「君が見ていたのは僕のいう『ラジィ』であって、『ラザンクール』じゃなかったのかって聞いてるんだよ!」
理解知るのにしばらく時間がかかった。が、徐々にキサカは把握していく。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷