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エイユウの話 ~秋~

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 校内はあんなに用具やら何やらで派手で騒がしいのに、中庭はいつもと何一つ変わらずにすっきりとした感じがした。生徒がいなく、他が賑わいでいる今は、吹き抜ける青空と枯れ草が映えて広くも見える。中庭での秋祭りの準備が禁じられているためだ。だからか本番前であるにも関わらず、もう当日使用する旗がかかっていた。運動会の国旗のようなものである。描かれているのは各専攻を象徴する紋様だ。
 四人で集まることの多かった、なじんだ広葉樹に寄りかかる。軽く目を閉じて、腕を組んだ。色づいた木の葉が風に吹かれて乾いた音を奏でている。まだ落ちるほどには枯れていないのか、落葉の姿は少なかった。
「あ、キサカ君」
 そこに来たのは、先ほどの通話の相手、アウレリア・ラウジストンである。彼女の担当する仕事が一番最後までかかることが多いので、仕事が終わり次第加わることになっていた。しかしまだ担当する屋台の仕事が終わっていないので、結局新学期が始まってから一度しか会えていなかった。
 キサカの元に駆け寄ってくると、何かを決意したような顔を向けた。
「キサカ君、二人を仲直りさせましょう!」
「・・・は?」
 記憶によれば、彼女はそこまで意欲的な人間ではないはずだ。どっちかといえば、「どうしよう」と空想的な模索を繰り返すような性格をしていた。だが、その表情は真面目一色である。珍しくキュッと寄せられた眉が証明だ。温厚な元の顔と合っていなくて、どこか可愛い気もする。
 つい言葉を失っていたが、しばらくして頭を掻いた。困惑したときの癖である。それを知るアウリーは、慌てて付け加えた。
「いえ、嫌なら無理強いはしませんよ?ただ・・・」
 決意の曇った顔を、見えないように下へ向ける。それでも不安なときに下を向く癖に、キサカが気付いていないことはない。原因は解らなかったが、眼の向け所に困った。
「四人でいるときのほうが楽しいんです。最近ラジィも妙に物静かになってしまって・・・」
 キサカの中で合点がいく。決意の強さの原因は、彼女が強くなれた「要素」を取り返すためだったからなのか。向けられたすこし右寄りのつむじに、ポンと優しく手を置いた。驚いてアウリーが顔を上げる。彼は悪ガキのような、元気がよく、しかし何か企んでいるような笑みを浮かべていた。
「あいつらに振り回されるだけじゃ、わりに合わねぇもんな」
 協力を明らかにした言葉に、彼女は心から嬉しそうに「はい」と元気よく答えた。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷