エイユウの話 ~秋~
「あんたってさぁ、アウリーのこと、どう思ってんの?」
「・・・どいつもこいつも。友達だよ、と・も・だ・ち!恋愛とかふざけんな」
彼は時々、こんな恋愛を否定する発言をする。理由は知らないが、結局は柄じゃないと自分で拘束してしまっているのだろう。なんとなく彼に問う。
「キースのことはどう思ってるの?」
キサカは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。恋愛的質問かと思ったため、同性の名前に驚いたのだ。が、ほとんど反射的に答えてくる。
「友達だが・・・、それよりも憧れのほうが多いだろうな」
「憧れ?」とラジィの眉間にしわが寄った。どう見たって、キースがキサカに憧れるほうが自然だ。訝しい表情であまりに凝視したためだろう。キサカは頭をガリガリとかきながら、口を開いた。
「詭弁や暴言なんて、どれだけ雄弁でも意味が無いだろ」
確かに、キースの言葉は誰かを助ける言動が多い。誰かと比べなくても、それは一度接するだけで、大体解ってしまうだろう。逆にかなり雄弁なキサカは、一対一で話さなくとも、相手を馬鹿にする言動の多さが露見する。導師に対してもそうなのだから、もうどうしようもないだろう。単純に、自信の差とも言えそうだ。
いつも偉そうな彼が自分を卑下する姿の物珍しさに、ラジィは開いた口がふさがらなくなった。
外側から見えるほど、彼は自分のことが好きではないのだ。
「なんか・・・意外だったわ」
たったそれだけで、彼女がどう思っていたのかが伝わってしまう。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷