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エイユウの話 ~秋~

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 カフェテリアの厨房。あまりの混雑により手が足りなくなったために、何人かがウェイトレス係から借り出されていた。すると今度はウェイトレスが不足して、馬車馬状態になっている。包丁も使えないアウリーが、トレイをもって注文の品を告げた。
「コーヒー二つとハーブティー一つとヤッカケーキ四つ、お願いします!」
「了解、ちょっと待ってて!」
 待機を支持されたアウリーは、待機用の椅子でひと息つく。お客がいない間もずっと立ちっぱなしだったのに、演劇が終わったとたんに一気に人がなだれ込んできて今度は走り続けだった。運動が得意ではないアウリーの体力は、結構限界に近かった。ちなみにヤッカは果実の名前だ。
『心の、心の』
 聞きなれない高音に、アウリーは目をぱちくりさせた。思わず耳を触る。わざわざ「心の」と呼ばれるのは、「心の何とか」という称号が多いこの学園でも、否定的な語句が続く彼女以外いない。
 辺りを見回すと、肩に一羽の小鳥が止まった。それを見て思い出す。この鳥は、彼女の思い人の契約魔である。
「貴方はキース君の・・・!」
『でーんごんだよ。三刻に中庭に集合!心のは魔禍に、魔女は達人に何かを買ってくるこーとー』
 楽しげなゲティーラッサの喋り口に、アウリーの心が癒される。一通り喋り終わると、またパタパタと彼女の周りを飛んだ。それから逆の肩に「ふぅ」といって着地する。その一通りの動作が、とても可愛かった。アウリーは優しくゲティーラッサに教えてみる。
「魔女はあの子だから、あの子にも教えてあげて」
『わかったぁ!』
 そういうと彼は混雑する厨房の中へと飛んでいった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷