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エイユウの話 ~秋~

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「木鏡?何に使うんだ?それ」
「僕らは抜けられないからね。ゲティに頼もうかと思って」
 そういうとさっさとザルピッツを包む列に並び、木鏡を軽く撫でた。そこから小さいながらに美しい羽を持った小鳥が姿を現す。先日の試合で初めてお披露目された二匹目の契約魔、ゲティーラッサである。彼は可愛らしい声でキースの周りを飛び回ってから、その肩に止まった。そして顔を覗き込んで首をかしげる。
『何の用?』
 出してもらえて嬉しいのか、少しテンションが高かった。そこに可愛さを覚え、キースはつい笑ってしまう。
「伝言を頼みたいんだ。えー・・・と」
『誰に?』
 待ちきれずにゲティが尋ねた。キースは昨日の彼の召喚時間とその視界にとらえられるだろう人を思い浮かべる。
「アウリーは解る?オレンジの髪の」
『きのう観客席にいたあの子だね?わかるよ』
「じゃあ・・・」と詰まったキースに代わり、
「三刻に中庭で。心のは魔禍(まか)に、魔女は俺にそれぞれ何か買ってくること。俺は達人な」と、キサカが説明した。ゲティーラッサは、むっとした顔でキサカを見たが、主人がもう一度頼むと喜んで窓から飛び出した。契約者以外の命令を聞かないというのは、姿性格の個体差の激しい契約魔たちに共通する珍しい部分だ。
 ここで間違う人がいるかもしれないので忠告しよう。基本的には召喚中に術師は動くことが出来ないとされている。が、それは「その場から動けない」というだけで、今までの練習試合の様子のように、立ち座りや上体をそらす事は出来るのだ。
 それを見送ってから、ザルピッツ作りに励む。工場の作業場のように、一列に並んで材料を包んでいくのだ。ものによっては、包んだ状態のものを一度焼いてから、注入する場合もあるが、それは彼らの担当ではない。先ほどの話を思い出し、キースはふと尋ねた。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷