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エイユウの話 ~秋~

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「明日は豹が降ってくるんじゃないのか?」
「空からねずみが降ってきたって驚くわよ」
 ひどく気味の悪い態度に、キサカが思わずもらした皮肉だったが、彼女はいつも通りその皮肉に返答を入れた。どこか悪いのかとも思ったのだが、そうでもないらしい。
 それでも信用できなかったのか、キサカは思わずラジィの額に手を当てた。
「熱は無いよな?」
 が、その瞬間。ラジィの顔は見る見るうちに赤くなった。キサカの手をどけてキッと睨んだ。
「馬鹿にすんのもいい加減にしなさいよ!」
「ああ、やっぱいつものお前か」
 けらけらと笑うキサカに、ラジィは食ってかかる。そのままいつもの喧嘩が始まった。
 結局彼女が謝った理由というのは、アウリーとキサカにあるのだそうだ。仲直りさせようと奮闘している二人を見ているうちに、他人に迷惑をかけていると、責任感の強い彼女の中で耐えられなくなったのだという。
 けれどもキースにとっては、おかしな話だった。確かに彼女の責任感は強いが、それならもっと早くに解決していたはずだ。それ以外に理由があるのではないかという考えが、キースの中で渦を巻いた。

 そんなわけですっきりはしていないのだが、久々に四人で行動が取れる状況になったのである。先の提案に賛成すると、ポケットから木鏡(もっきょう)を取り出した。四人で集まれることは彼にとっても嬉しいことなのだ。
 嬉しさ満開で取ったその行動に、キサカは目を丸くした。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷