エイユウの話 ~秋~
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私はただ、彼を驚かそうとしただけでした。魔物の肉を食った男なんて、そうそう見ません。そしてそれは、彼を答えに導くヒントになるのではないかと考えたのです。
また、被呪者の男のほうにも、何らかの影響を与えるのではないかと思いました。どんなに魔力が高いと言えど、彼の魔力は青年の二分の一にもなりません。それでも、魔力の扱いが私よりうまいという事実は変わりません。その技術を彼に教えてもらえれば、と思ったのです。
これらは私の好奇心をごまかすための詭弁でした。自分でもはっきりと、それは解りました。それでも抑えることが出来ませんでした。
しかし、私はこの行為がいかに浅はかであったのか、十分に思い知るのです。
――『黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)』第二章第一部より一部抜粋
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷