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エイユウの話 ~秋~

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「どういう意味ですか?」
「お前、もう少し偏見を取り除いてみたらどうだ?」
 質問を無視して返されたのは、欠点の改善提案だった。基本的に誰かと会話するという発想がないようだ。一方的に話を進めることが多い。その自分勝手さはキサカと似ているが、ノーマンへの苦手意識も加わって不快感が強い。
 そんなキースをよそに、ノーマンは話を続ける。
「この話を悲愴思想だと思って読む奴も多い。でも、意外とそうでもないんだぜ?」
「何処がです?」
 「黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)」を要約すると、作者が魔物喰らいという呪いを受けた男と出会ったことが原因で、学園が半壊する事態が起きる。そしてそれを止めるために友人となった被呪者のジャームの男が、その朋友を討つのだ。が、悲劇はそれだけにとどまらない。被呪者の男は、その呪いに呑まれて、魔物になってしまう。そしてその男の討伐をあてがわれたのは、主人公が所属するチームだった。つまり、彼は友人を殺す運命を背負ってしまったのだ。どう考えたって悲しいだけの話で、ザ・悲愴思想というべき小説なのだ。
「ま、成人してからもう一度読んでみろ。何も考えずに、な」
 キースに背を向け、彼は観客席のほうに向かって歩いていった。向こうでなにやら言われているが、全て適当に受け流して、先ほどと同じところに座る。
―――偏見を取り除いてみろ
 キースの中でノーマンの台詞が、重々しく沈殿していた。



作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷