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エイユウの話 ~秋~

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「って言うかセンパイ、あんた演劇頼まれてなかったか?」
「あ、それを言うな!今はギールから・・・」
 慌てて事情を告げようとする彼の肩に、優しく手が置かれた。後ろには輝かしい紅の頭髪を持った男が、晴れやかなほど黒い顔で立っている。青々と開けていた空に、いつの間にか少し雲がかかっていた。
「見ぃつけた」
「ぎ、ぎーる・・・」
 現れたのは、「奏の黙示(そう・の・もくし)」として、やはりキースですら顔を知る著名人、ギーランティ・エンジゲートだった。ほかの魔術に対し、技術・センス・魔力をバランスよく兼ね備えていなければ習得できないという奏の魔術を専攻とし、中でも最高術師という地位まで手に入れた凄腕(すごうで)術師である。もちろん専攻内に必ず一人の最高術師はいるのだが、彼は先ほどまで話していたノーマン以外の最高術師の全員を練習試合という場で凌いだ実績を持っていた。だからといって、ノーマンが最高術師に全勝したわけではない。あくまで彼に勝っただけだ。ともかく彼も、もちろん卒業資格所持者である。
 二人の関係は、専攻こそ違えどキースとラジィのような状態で、なぜか問題児であるノーマンの扱いは全てギールに託されていた。今回演劇に関係ないはずなのにノーマンを探していたのも、そういう裏があるためである。
 ずるずると引きずられる形で強制退場したノーマンを見送り、思わず互いに目を合わせた。
「一体何のために来たんだ?」
「さあ?逃走中に足を止めるほど、君は珍しい人間ではないと思うんだけど・・・」
 そこでふと思い出す。登場した際にノーマンの言った台詞である。失礼ではないかと思いながらも確認する。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷