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エイユウの話 ~秋~

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「相継漣(ウェーブ)は魔獣がいなくても、一回で最低二回は発動する魔法だよ」
 召喚獣がいなくなり、魔法が使えないと思っていたキサカは、見事にそれに飲み込まれた。が、その瞬間、水がいきなり向きを変える。
「え?なん・・・」
 返ってきた大波は、今度は驚いたキースを飲み込んだ。最高術師二人分の魔力によって生み出された水は、結界内に溢れ返る。深さで言えば、一般のプールと同じくらいの深さがあるだろう。通常の試合では見れない光景である。激しく回転するその水は、多くの泡を含んでいて、それが中の二人の姿を隠している。
 しばらくして水が引くと、ずぶぬれの二人が姿を現した。唐突に飲まれたせいでむせるキースに対し、キサカが息も絶え絶えに、二つ目の火筒の栓を外しながら悪戯に笑った。
「術者がいない魔法ほど、接収しやすい道具はねぇよ」
 緑の魔術は唯一の間接魔術である。使用者が契約魔を経由して、魔術を発動させるのだ。つまり、今のキースの使った魔法の直接術者はクルガルということになるのである。
 続けて三つ目の火筒の栓を外すキサカを視界に入れると、キースは再びクルガルを召喚した。
 基本的に、この二人の勝敗をつけるのは難しいのだ。なぜならば、力が互角な上、扱う属性が同じなので、お互いに接収し合うという事態が起こってしまうためである。やり取りのレベルが高いため、「長引いて観客からブーイング」なんてことはないが、相打ちになって勝者なし、という結末しか残っていないだろう。
 が、キースの言った「本気を出す」ということの真意を、キサカは遅れながらに思い知らされることになる。
 キサカの水の刃の投擲と、クルガルの鋭い爪と牙の猛攻のせいで、お互いもうぼろぼろだった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷