エイユウの話 ~秋~
「もう腹をくくったからね」
「ラジィに謝る腹をか?」
「いや、君に対して、尊敬と友情の意をこめて、本気で戦おうって腹だよ」
キースのらしくない不敵な笑みに、キサカは少し怯んだ。キースでも、こんな表情をするのか、と。キースがポケットから木鏡(もっきょう)を取り出したのを見て、キサカもベルトから一本だけ火筒(ほづつ)を取り出す。そして不遜な態度を全面に出した。
「それはそれは。光栄の至りでございます」
そうふざけて返すことで、怯んだ気持ちを引き締める。キースはそのふざけた調子につい笑ってしまったが。
そんな二人のやり取りも知らずに、ハイテンションな司会者が高らかに宣言する。
「さあ、最高術師同士の対決です。勝利の女神はどちらにつくのでしょうか?」
キース対キサカの、模擬戦闘が始まった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷