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エイユウの話 ~秋~

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 通常、秋祭りでの生徒による模擬戦闘は、そのメリットから希望者が多すぎるために、数日前に予選を行う。出たくないキサカとキースは、そこでわざと怪我をして出場を逃れる算段を組んでいた。が、ノーマンにとってそれを見抜くことぐらい、寝ぼけてでも出来るらしい。
 予選会当日、無理やリ集まらせられた各専攻上位五名に対し、ノーマンは当然のようにのたまったのだ。
「上位五名はシードだから、帰っていいよ」
 そしてキサカが今ついている悪態は、それに関しての話になる。もちろん彼がすぐさま直談判したのは言うまでもない。そしてそれがうまく流されてしまったことも、説明は要らないだろう。
「しょうがない」といって、キサカは席を立った。飲み物の代金はすでにテーブルのところに置いてあり、結局のところ、さっさと飲んで帰るつもりだったということが見て取れる。彼の文句は大抵意味を成さない口だけのときが多かった。
「あんた、その無駄な文句言いの部分さえ直せば、もう少しはモテるわよ」
「お前はその世話焼きな部分を直したら、見直してもらえるのにな」
 そういうとさっさと人混みの中に消えてしまった。小銭を出すことでもたついていたキースは、その料金をラジィに渡さずに、キサカに倣って卓上に支払う。せっかく彼女と久々の二人きりになれるチャンスというのに、キースは彼を気にしてさっさと追いかけていってしまった。
 残されたラジィは払われた金額を数えながら、勘定も終わっていないうちにさっさと帰った二人に文句をたれる。
「・・・しかも、ピッタリだし」
 ごたごたと喋っていたせいで値段を言いそびれた非があったのだが、浅学ではない二人は、ピッタリの料金をそろって払っていったのである。次高術師の自分とのそんな些細な差に、ラジィがすこし憂鬱になったことは、共に働いていたアウリーすら知ることはなかった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷