小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エイユウの話 ~秋~

INDEX|43ページ/89ページ|

次のページ前のページ
 


 秋祭り初日の午後というのは、一大イベントの最中だというのに妙に空いていた。一人模擬戦闘に参加しないアウリーは、一人だけ長い仕事時間を終えて、緑の闘技場に向かっているところである。

 ―――もしかして、もう最悪の事態は起きちゃってたりして・・・

 仲直りが間に合わなかったために激化が予想される、キース対ラジィの試合が頭をよぎった。不安さから、早歩きだったものが駆け足になる。
 走り続けて、最短時間で緑の闘技場に到着した。こんなに体力があったんだと、肩で息をしながら顔を上げる。そこで彼女は絶句した。
 先ほどまで混雑していた秋祭りが空いた理由はもとより推測は出来ていた。が、その人数は想像を絶するものだったのだ。
 あまりに込みすぎていて、闘技場が見える位置までも行けなかった。背の低いアウリーは一所懸命に背伸びをするが、闘技場の青色の台の端すら目に入らない。今誰が戦っているのかなんて、全く確認できる状態ではなかった。この時ばかりは、すり鉢状でも意味がなくなる。
 もちろん学校側がその事態を想定していないわけがない。遠くの席で見えない客用に、大きな電光掲示板を四方に立てて対応していた。それを見れば、誰が戦っているのか、どんな状況なのかという事細かな情報まではっきりと解る。はずだったのだが、周りの人の頭が邪魔で、彼女には電光掲示板すら見えなかった。背の低い人のことも考慮して欲しいと、つい不満を抱く。
 対戦している人物が例の二人でないことを祈っていると、背後から声がかかった。
「やあ、魔禍の応援かい?」
 それは昼に一度お目見えした人物、ノーマン・ネージストだった。役員として見回りをしているらしい。今年の秋祭りのスケジュールは、さぞ忙しいことだろう。
 キースの応援とずばり言われ、恥ずかしくなったアウリーは慌てて補充する。
「あ、キサカ君も、ラジィさんも出てるので、皆さんの応援に・・・」
 おどおどとした態度の彼女に対し、ノーマンは大柄な態度を隠さない。はたから見れば、彼におびえているようにも見えただろう。フェードアウトしていく彼女の声に、それでもノーマンはきちんと耳を傾けて話し終わるのを待ってくれた。その優しさはしっかりと伝わり、アウリーは少しずつ落ち着いていく。
 応援に来たことや、闘技場が見えないのでどうしようかとまごついていたことなど、聞かれるままに答えると、ノーマンが黙り込んだ。少し考えるそぶりをしてから、淡々と提案してくる。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷