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エイユウの話 ~秋~

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「大体なんでこんなもん着なきゃならねぇんだ」
「お客さん来ないと、来年の学食代上がるよ」
 秋祭りでの収入の八割は、学食の一年間の食費に使われる。つまり、売り上げが悪ければ、あとで自分たちにツケが回ってくるシステムになっているのだ。みんな必死になるわけである。
「横暴だろ」
「いいじゃないか。似合ってるよ、キサカ」
「嬉しくねぇほめ言葉をどうも」
 鈍い光沢生地に安っぽさを感じながら、キサカは宣伝側の武器となるメガホンを取った。
「お前も武器の用意しとけ」
 キースは同じ宣伝側ではあるが、試食を配る係なので、武器はメガホンではなく彼が得意とする笑顔だ。暗い顔をしたままのキースを気遣ったのだろう。
 それが解ったキースは、応じるようにクスッと笑った。こういうとき、キサカと同じ仕事場でよかったと感謝する。そんな思いを知る由もなく、キサカは掴んだせいでよれた服のすそを、パンパンと二回はたいた。
「うし!んじゃ行くか」
「サボっちゃ駄目だよ」
「食費のためだ。頑張ってやるよ」
 二人が屋台の外へ出たのと同時に、秋祭り開催の合図が鳴り響いた。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷