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エイユウの話 ~秋~

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「秋祭り中に、模擬戦闘が行われることになった。参加したいやつは、卒業資格所持者恒例演劇の会場の緑の闘技場の俺のところに来い!一人一試合ずつだが、何人でも受け付けてやるぞ!」
 どこも例年と違うところなんてないのに、その覇気に呑まれた物たちが「ワーッ」と大きな歓声を上がった。その大半は二年生である。
 秋祭り中の模擬戦闘は、入学希望者や法師を雇う施設の人間が人選しに来たりするので、結構な名物行事となっている。基本的に二年生からが参加するものなので、一年生のキースやアウリーには関係のない話のはずだった。が、しかし。
「いいか、よく聞け一年!俺の計らいにより、今年から一年生の参加が可能になった!特に各専攻上位五名に含まれるものの出場は必須だから、忘れたら俺が直々にひっぱりに行くからな!」
 一体なんて事してくれたんだ。キースは思わず突っ伏した。秋祭りの模擬戦闘なんて一年生の彼にとって、大してメリットが無い。たとえ人選に来た人の目にかなったとしても、会社に入らない自由法師を目指しているので、面倒なことが増える、デメリットに過ぎなかった。会社なんかに入っては、またいじめられる毎日の始まりである。
 顔を上げたキースがノーマンを睨みつけると、ふざけてピースをして見せてきた。金髪はやはり見つけやすいらしい。何を考えているのか、推し図ることすら不可能だとよく解った。
「キース君、頑張ってくださいね」
 多少例外的な立場だとは当然知らないアウリーが、早々と声援を送ってきた。彼女としては、一番に応援できたことが喜ばしいのだ。困惑しながらも、一応ありがとうと告げておく。あふれんばかりの喜びを消すようなことは、できるはずもなかった。
 不意に後ろから声がかかる。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷