エイユウの話 ~秋~
自分から話をそらしたのだが、勝手に閑話休題する。
「で、次は何をするつもりなんだ?」
「少し強行ですが、一緒に行動し直そうかと思いまして」
「…俺達はまだ仕事が残ってんだけど」
「勿論それ以外の面です。来週から秋祭りの準備事項だのあるじゃないですか」
つまりは共に仕事をする前に、一度なじませておこうというのだ。確かに今の状態でいきなり同じ仕事をしろと言ったところで、何らかのケチをつけてまた男女別々行動になってしまうことは目に見えている。事実、数回の一時的な手伝いですら険悪に近いムードを醸していた。それを踏まえて失笑する。
「結構荒療治になりそうだな」
「仕方ありません。あの二人がいけないんです」
それは間違いなく正論なのだが、それでいいのかと考えてしまうところもある。何せ彼らは互いに恋愛という、他人の死角で争っているのだから、どちらが悪いとか正しいとか、そういうのが無いのだ。正論のない論争ほど、水遊びになるものは無い。
しかし他にいい案も浮かばないので、それに従うほか無かった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷