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エイユウの話 ~秋~

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 二日間の休日を挟んだ次の日。秋祭りの説明が行われる地(ち)の闘技場に、キースは早々と着いた。まさに一番乗りといった感じで、ほかには準備をしている術師が居るくらいだった。
 この学校では全校集会の系統に、最高導師のいる魔術の闘技場を使う。原因は全校生徒を収容できるほど大きな体育館が存在しないところにある。基本は雨天順延で、降雨期のみ校内放送で行われることになっていた。そんな一人ひとりを確認できない環境のためか、来ない生徒も多く居る有様だ。
 いじめは嫌だが、学校は嫌いではないので、毎回全校集会に彼は顔を出している。地の闘技場は他の闘技場に比べて使用頻度が多いためか、何度も修繕されていて、逆に綺麗だ。実践授業時は興奮して立ち上がるために使われない黄色のベンチに、ゆっくりと腰をかけた。そしてそれとなく闘技場を見る。

 ―――最近みんなと会ってないなぁ

 何気なくそう思った。「みんな」とはもちろん、彼とキサカ、ラジィ、アウリーがそろった状態を指す。最後にそろった日は、サートンの終わった始業式の日だ。あの時すでにキースとラジィは決裂状態で、共に行動はしていたものの、男女の間に亀裂が入り始めていた。少しそろったとは言いがたいかもしれない。
「キース君?」
 能天気に過去にさかのぼり、勝手に落ち込んでいたら声がかかった。ずいぶんと久しい声に、目を丸くして振り返る。人混みの中から、一人の少女が姿を現した。
「アウリー!久しぶりだね」
 そう。現れたのはアウレリア・ラウジストンだった。さっと立ち上がって、彼女のためにベンチを空けた。キサカのためにとっておいた席だが、まだ反対側が空いているので、そちらに場所取りの荷物を移す。彼女は空けてもらったその席に、おずおずと腰をかけた。それから先ほどの返事をする。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
 好きな人との再会だからか、うわずった声で手紙の書き出しのような台詞が出てしまった。凹(へこ)むアウリーをよそに、想われ人は再会に喜んで珍しく気付かない。満面の笑顔でもう一度挨拶をしてから、何も知らずに付け足した。
「キサカも元気だよ」
 知っていますとはもちろん言えず、そうですかと知らないフリをして良心に傷がつく。そして次に出た一言は、彼女の精神に結構なダメージを与えた。
「・・・ラジィは元気?」
 苦笑いをしていたアウリーも、一瞬固まってしまった。今度は視線をそらしていたために、気付かれてはいない。もどもどとしてから質問に答えた。
「・・・元気です」
 お互いに「間」に、話題の人物への感情がこもってしまう。
 その後も二人はあまりにもたどたどしい会話を繋げていった。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷