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エイユウの話 ~秋~

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「凄い人だったんだと思った」
 きっと言いたい様々な言葉を、そのひとつのまとめたのだろう。しかし、まとまり過ぎていて、いまいち意味が解らない。
「凄い人?実力なら上も下も無いだろ」
 同じ部門の同じ地位に、時代は違えどたどり着いた者だ。凄いという言葉はあまりにも漠然としていて、逆に、一年次から最高術師の称号を得ているキースのほうが、凄いというにずっとふさわしい。下手すれば、皮肉と思われそうな一言である。と、キースは持ったばかりのスプーンをまた置いて指を組んだ。ふさわしくまとまったはずの一言を、どう分解して説明するのか迷いながら、ぽつぽつと言葉をつむぐ。
「そうじゃなくて・・・二つとか、三つとかの開きじゃカバーできない差が、あの人との間には感じるんだ」
 数字が表すところは、もちろん年齢の話である。きっと感じとったのは、意志の強さだろう。金髪差別において、残ってはいるが、それでも軽減したのはノーマンの力という以外に無い。キースの気があと少しでも強ければ、金髪迫害思想は今年を境に風化したに違いない。
 自覚をしていないようだが、彼にはかなり自己犠牲的で自虐的という、「自分よりも他人」主義なところがある。そのため自身を卑下しているとすぐに解ったが、ノーマンの実力は尋ねた方だって賛成していた。ノーマン・ネージストという男は、人の物差しでは計れない何かがある。
 昼食を終えたころ、キサカのシャウダーが鳴る。この世界にメールなんて便利なものは無く、一言謝罪してから通話ボタンを押した。通話相手は、番号の出ないシャウダーでもすぐに解る。
「どうしたよ?」
『いえ、すみません。失敗しました』
 姿は見えなくとも、シャウダーを当てたまま何度も頭を下げる姿が想像された。思わず小さく笑ってから落ち着かせた。
「気にすんな。すぐに解ったから」
『それは良かったです。それで、いま少し休憩時間がもらえたんです』
「今から来るのか?」
 アウリーの発案のため、続行するなら従うつもりだったが、再び落ち込んだ声が返ってきた。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷