エイユウの話 ~秋~
「いいぜ、でも条件がある」
風が吹いて、雲間から太陽がのぞく。それはまるで、キサカの気持ちを示しているようだ。相手の顔も見ずに、作業に没頭したまま応じる。
「こんな忙しいのに・・・面倒だなぁ」
「簡単だって。昼飯、学食で食おうぜ。新メニュー出たの、知ってんだろ?」
この話は本当である。今まで天、地、海の三定食が最もポピュラーだったのだが、先日森、山の二定食が追加されたという話は、ミーハーな者でなくとも既知の情報だ。もちろんキースも知っていた。つい軽快に笑い出す。
「キサカの出す条件だから、一体どんな難しいことを言われるんだろうと思ったよ」
それに乗じて、キサカも笑った。いつの間にか雲は晴れて、太陽ははっきりと姿を見せている。外で作業するにはありがたい天気となった。
何はともあれ、キースを昼食に誘うことに成功した。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷