小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エイユウの話 ~秋~

INDEX|10ページ/89ページ|

次のページ前のページ
 

 先に目標の人物を見つけたのはキサカだった。今日は別の仕事をしていたので、どこにいるのか検討も出来なかったが、どうやら屋台の看板を製作していたらしい。キサカが働いていた場所からそう遠くないところで、座り込んでいるのが見えた。
 二人が任されたのは「出店街」という秋祭り恒例イベントの一種で、要は屋台で物を売るという仕事だった。二十近くある屋台の製作からが仕事なので、結構重労働が多く、八割が男というむさ苦しい分野である。
 キースはクルガルにいろいろアドバイスをもらいながら、ベニヤ板にペンキで文字を書いていた。字の綺麗ということで、この手の仕事まで流れ込み、意外と休む暇が無い。猫の手も借りたい状況では、差別なんてしていられないのだ。もちろん頼みを受け入れる彼の人の良さがあってこそ、ということは忘れてはならない。
 驚かそうとそろそろと近づいたのだが、さすがに魔獣であるクルガルには気付かれた。「バレた」という状況が少し恥ずかしくて、さも平然を装う。
「よお、キース。精が出るな」
「手伝えるなら手伝ってよ。二十枚もベニヤがあるのに、十枚は下地も塗られてないんだ」
 言われてみれば、白と地色の板の二色がある。組立作業に参加しなくていいのは助かるが、あまりにもずぼらな任せ方だ。わざわざ塗らなくてもいいということかもしれないが、几帳面さがそれを許せないらしい。面倒なことだがしかし、この事態にキサカは思わず感謝した。取引が出来るからだ。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷