小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

二人の王女(6)

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

「マルグリット、このままこの道を行くのは危険だ。我々も毒に冒されてしまう可能性が高い」
 アークの言葉に、マルグリットは強く頷き、「進路を変更する。一度横に逸れよう」と、馬の踵を返した。
「この毒の様子だと、精霊たちは…」
「もう蝕まれた後だろう。これはもはや、人間や国だけの問題ではなさそうだ。手を打たねば、世界が滅びる」
「精霊にまで感染するとは、そんな毒は聞いたことがございません」
 シェハが、間のあたりにした見たこともない窮状に、頭を抱えるようにして云った。
「一千年前に同じような毒が蔓延したという記載がございましたが、そのとき精霊たちにまで感染したという記述は一切ありませんでした」
「ラズリーの花は、もし咲いていたとしても一輪、すべてを救えるのだろうか…」
 それは、絶望を含んだ言葉だった。一行は戸惑いを隠せない様子だった。だが、マルグリットは「今は行くしかない」と、馬を再び走らせた。

 それはとても奇妙は光景だった。右手には美しい森が広がっているのに、左手には光さえ射さないどす黒い不気味な森が広がっているのだ。それはまるで、悪の巣窟のような佇まいだった。あすかはシェハに訊ねた。
「ラズリーの花って、毒消しなの?」
 シェハは静かな声で云った。
「ラズリーの花の詳細は、知られていないのです。現世では、エルグランセの土にのみ生息できる、不思議な能力を持つ伝説の花として知られています。しかし、古い書物の記述には、今回の毒が太古に蔓延したことがあり、そのときにラズリーの花がそれを救ったと、そうあります」
「その花を見た人はいないの?」
「今生きている人間たちの中には、おりません。しかし、我々占術師の手にも負えないとなると、その花にすべてを託すしかないのです」
 へぇ…と、あすかは感心するように云った。だが、新たな疑問が浮かんでくる。
「もしその花がなければ…?」
 シェハの顔はこちらからは見えないが、おそらくとても厳しい顔をしているだろうと思われる、低い声で云った。
「この世界を救う手は、ないと云えましょう」
作品名:二人の王女(6) 作家名:紅月一花