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二人の王女(6)

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前回までのあらすじ。

毒に冒された国を救うべく、ラズリーの花を求めて旅をするアズベリー国の王女たち、そしてひょんないきさつからその旅に同行することになったあすか。
夜明かしをするはずの場所に敵国の騎士たちが現れ、気付かれないように出発しようとしていた一行だったが、突然騎士たちの悲鳴が聞こえる。
彼らの前に現われたのは、人食いの生き物・ジョハンセだった。王女・マルグリットはそれを助け、馬を失った敵国の騎士たちに旅の同行を持ちかけた…







                      6



 陽は昇り、そしてまた沈む
 ただ同じように繰り返されているだけの一日でも、歴史は刻一刻と新しいページを刻む
 美しい夢の目醒め、
 漆黒に染められた毒は、鮮やかな歴史を脅かし、蝕んでいく
 新しい夜明けは、歴史の終焉への歩を進めていく…





 あすかは、シェハの背にぴったりとしがみつきながら、走馬灯のように過ぎていく森の樹々を、恐怖の目で見送っていた。また精霊が出てくるのではないかという恐怖が、どうにも拭いきれないのだった。
 シェハはそんなあすかの様子を見てとったのか、「静かにさえしていれば、精霊たちが起きることはありません」と、やさしく云った。

 もう森を走り始めてどれだけ経っただろうか。すでに夜は明け、空を覆い隠すように伸びた葉の隙間から、ところどころ陽光が差し込み、草に覆われた地面を照らしていた。精霊の存在を知らなければ、幻想的でうっとりするような眺めだ。

 そのときだった。突然、馬の動きが緩やかになり、そう思うと完全に止まった。
 顔を上げ、前を見ると馬の歩を止めたのは先を行っていたマルグリットたちらしかった。
「これは…ひどい」
 キーチェが、苦虫を噛み潰したような低い声で云った。
 それまでは美しい樹々が立ち並んでいたのに対し、五十メートルほど先に広がる樹々は、幹がどす黒い紫色に変色し、その至るところから同じような色の蔓が幾筋も伸びていて、まるでジャングルのようになっていた。
「これは…」
 マルグリットが云うと、それに繋げるようにゼブラが云った。
「あの毒だ…」
 あすかには、それがどういう毒なのかはわからなかったが、ただこの両国を蝕む毒を指していることは話の筋から聞いて取れた。
作品名:二人の王女(6) 作家名:紅月一花