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Neverending Story

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「あ、明日…、帰ろうと…思う…」

ノドがカラカラだった。

それなのに緊張感は更に高まり、口内や躰の水分を容赦なく奪っていく。

帰りたい。いや、帰りたくない。

その戦いは平行線のまま続くばかりで、一向に結論を出せないままここまで来てしまった。

でも、もう過去に囚(とら)われるのは終わりにしよう。

そして、年甲斐もなく恋をするのもやめにしよう。

いや、恋に歳は関係ない。

でも、昔愛した彼女を唯に重ね合わせ好きになるのはやはり都合のいい話しで、自分勝手すぎた。

だから、自分は明日帰るのだ。

夢は、いつかは醒めるもの。

そして、いつかは終わるもの。

永遠に続く夢などない。

いつまでも幻想を抱いていても仕方のないことだし、どこかで見限らなければならない。

それが今、この日だっただけのこと。

そう、だから自分は明日帰る。

そして、現実の世界に戻る。

いつもの生活が、自分には待っている。

そして、章子との復縁も。


そう…。と言ったまま、唯が黙った。

高瀬は不安になった。

勝手に、帰る、と言っておきながら、唯が無反応だったことに。

もしかしたら、唯は自分に好意を抱いているのではないか、と勝手に思い込んでいた。

だから、なんらかの言葉があるのではないか、とちょっとだけ期待をしていた。

でも、唯は俯いたまま小石で遊んでいるだけ。やはり、それだけの関係だったのだろう。

ま、あたり前といえばあたり前の話なのだけれど…。

だけど、あのキスはいったいなんだったのだろうか、とふとあの場面が脳裏をよぎる。

勿論、お互い子供じゃないのだから、キスくらい、とは思う。

でも、たかがキス、されどキスではないだろうか。

お互い、多少なり好意を持っていなければそんなことは出来ないはず。

いや、好きじゃなければ出来ない。愛してなきゃ……。

高瀬は、唯を愛し始めていた。

有給はもう少しある。だから、もう少しだけここにいれる。

唯のそばに、もう少しだけいたい―――。



作品名:Neverending Story 作家名:ミホ