Neverending Story
「浩ちゃん?何飲むん?」
ホテルの近くにあるコンビニで、大量のお菓子やおつまみ、そしてアルコールを買い込み、部屋に入るなり唯が早速テーブルに並べたのである。
「んん?そうだな……。じゃ、とりあえずビールで」
「じゃぁ、アタシは……」
唯は目移りをしたのか、ワイン、酎ハイ、カクテルなどで迷っていた。
「グラス使う?氷は?」
高瀬は、冷蔵庫にまだ飲まないであろうお酒達を綺麗にしまう。
「いるいる。カクテルにするから、グラス欲しい」
はいはい、と言って、高瀬はグラスに氷を入れて唯に渡した。
アリガト。にこやかに笑って、唯が赤い液体をそれに注いでいく。
「なんのカクテル?」
「んん?これ?カシス」
そう言って、さっさと唯がお酒を飲み干した。
「お、おい、おい?俺は、君を待っていたのに……」
そう呟きながら、高瀬は缶ビールを一口飲み、そして深く息を吐いた。
昨日もビールを飲んだ。
なのに、美味しく感じるのはやはり二人で飲んでいるからなのだろうか。
唯は早々と、違うお酒に手を伸ばしている。
「おいおい?ちょっと、ペース早くないかい?」
「そう?いつもこんな感じだけどぉ?」
グラスに氷を注ぎ足し、半透明のお酒をグラスに注ぐ唯を高瀬は静かに見つめた。
少し酔ったのか、頬が薄紅色をしている。
この歳の頃は無邪気で可愛い。
なんて思ってしまうのは、歳のせいだろうか。
自分も、この頃は無邪気で可愛げのある青年だったはず、と遠い過去を思い返してみる。
そして、もう一度この年齢に戻れるなら……、と都合良すぎる思いがふとよぎる。
けれど、もう一人の自分がすぐさま現れ、それを邪魔した。
もうそんなことを思うのはやめにしたはずだ、と。
あの日の自分は、距離に負けたのだ。
いや、それは単なる言い訳で、本当は、自分は自分に負けたのだ。
だから、もう二度と―――。
作品名:Neverending Story 作家名:ミホ