After Tragedy1~プロローグ~
どこまで聞いてしまっているのだろうか。デメテルは不安になりながらも真相を探ろうとした。
「キュオネ、あなたは精霊レーニスがあなたの母親であるということを知っていたの?」
キュオネは、首を横に振ってみたものの、それは無意味なことと十分に理解しているらしく、肯定した。さっきまで明るかったキュオネの様子は嘘みたいに、今は肩を落として落ち込んでいる。
「ずっと知っていたよ。私はキロの子供じゃないって…。」
「そっか…。」
デメテルはなんとも言えず、視線を下に向けた。2人の間に沈黙が流れた。
「看守達は、私が10歳になった辺りから『お前は天才で名の知れた精霊の娘なんだよ』って言い始めた。それで、レーニスのことを教えてくれた。」
デメテルは複雑な顔をして、腕を組んだ。しばらく試行錯誤してから、今一番気になっていることを聞こうと決めた。
「…キロは、キュオネがそのことを知っていることを分かっているの?」
デメテルは聞いた。ここにキュオネを連れだすのにあたり、キロの方とも散々打ち合わせをしている。しかし、キロからはキュオネがある程度は理解をしているといった話は貰った覚えがない。
「お母さんは、私がそんなことを言われていたなんて知らないよ。言わなかったもん。言って困らせたくなかったから。」
キュオネは何とも言えない顔でデメテルにそういうと寂しそうにした。言わなかった理由は、キロ・ウインドスに対する遠慮だけではないのだろう。キュオネの表情にさっきまでの明るさがない。
作品名:After Tragedy1~プロローグ~ 作家名:未花月はるかぜ