After Tragedy1~プロローグ~
14歳を過ぎるまでは言わない。
14歳過ぎたら言おう。
それが、デメテルがキュオネの育ての親であるキロ・ウインドスにキュオネを託す際に決めていた期限だった。
この期限になるまでは、キュオネには彼女の母親であるレーニスや父親のシーのことを話さない。そういう約束をデメテルとキロはしていた。
けれども、キュオネはシーが住んでいた石の牢屋になっていた塀をみるなり、顔色が変えた。彼女は手に持っていた花束を握りしめた。その花束が、自分の亡くなった両親に供えるために渡さたものであると理解をしたのだろう。
「なんで、私がレーニスの亡くなった場所にお花を添えなくてはいけないのか、分からない。」
その言葉は、意味合いとは真逆にキュオネがある程度のことを知っていることを物語っていた。
「…。」
デメテルは、予想外の展開に一瞬言葉を失った。
こういう展開も考えなかったわけではない。
ただ、キュオネの様子から何も知らないものだと思い込んでしまっていた。
誰がキュオネに彼女の出生について教えたのか考えた時に、デメテルはキロではないと思った。キロがキュオネに彼女の出生について話すはずがない。キロは反逆者のリーダー核の右腕であったが、決めたことには絶対に従うような人柄だった。あらかた看守の誰かが洩らしたに違いなかった。看守が動けない囚人に対して憂さ晴らしに意地悪することをデメテルはよく理解をしていた。だから、キュオネを預けるに当たって、キロ・ウインドスのもとに配置する看守には気を使っていたはずであったが効果が無かったらしい。彼らはキュオネに彼女の生い立ちについて吹き込んでしまっていた。
作品名:After Tragedy1~プロローグ~ 作家名:未花月はるかぜ