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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy1~プロローグ~

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「ううん、平気!」
 僕は顔を上げ、改めてシー兄ちゃんを見ると、ドキッとした。

 シー兄ちゃんは目にクマが出来、泣いた形跡があり、いつもとは明らかに様子が違っていた。僕は自分の心臓がドキドキと急激に早くなっていくのを感じた。

「レーニスを守れなくて、ごめんな…。」
 シー兄ちゃんは僕に謝った。僕は酷い顔をしていたのだと思う。疲れ切ったシー兄ちゃんが僕を気遣ってくれる。それが悔しくて仕方がない。
「シー兄ちゃんの所為じゃないよ!」
 僕はシー兄ちゃんの目をじっと見つめた。そんなことはないって、僕は伝えたかった。
「…。」
 シー兄ちゃんは僕の目を見ると、微笑んだ。
「ユクスは大きくなったら、大切な人を守るんだよ…。」
 シー兄ちゃんは悲しそうな顔をした。

僕はシー兄ちゃんのその言葉が悲しかった。

シー兄ちゃんは、恋人のレーニスを守れなかった。それは凄く悲しい事に違いなかった。何とかすぐに笑顔を作ろうとする顔を、僕は泣きそうな気持ちで眺めた。シー兄ちゃんの目は涙を溜めているのか、キラキラ光っている。

「じゃあ、僕はシー兄ちゃんを守る!」
 僕はシー兄ちゃんの身体を抱きしめた。シー兄ちゃんの身体は少し強張ったけれども、程なくすると緊張がほぐれていくのを感じた。だから、僕は少しだけシー兄ちゃんの力になれたような気がしてほっとした。

 だけど、シー兄ちゃんの悲しみは、そんなことで何とかなる訳なかった。