After Tragedy1~プロローグ~
プロローグ2-2
14年前に、神殿の地下に続く階段をデメテルは無言で降りて行った。下からは何かを打ち付けているような音が仕切りに聞こえてくる。音のなっているその先には、極悪人として捕まったキロ・ウインドスの牢屋が特別に用意されていた。彼女は、人間を神の手から解放をさせようと奮起した反逆者グループのリーダーの右腕で、非常に危険な人物として見なされていた。看守から聞いた話によると、彼女は息子であるシー・ウインドスの死を聞かされてから、殺せと言って暴れているらしい。そんな彼女にデメテルは初めてキュオネを連れて行った。
デメテルは鉄格子の前に行くと、事態も解らずに渋る看守達を追い出し、キロ・ウインドスの牢屋にキュオネを抱いたまま入った。
そこには金髪の女性がいた。彼女は、通常よりも更にきつく鎖で縛りつけられていた。髪は乱れ、唇は噛みきったのか血が滲んでいる。
キロ・ウインドスは、鎮静化させる魔法を何重にもかけられているのにも関わらず、ギラギラした目でデメテルを睨んだ。
けれども、デメテルは怯まずに彼女に近付いた。
「レーニスに似た精霊の赤ん坊を私に会わせてどうするつもりなの?」
「この赤ん坊はレーニス・フェアリースと貴方の息子シー・ウインドスとの子供です。貴方に会わせたいと思い、こちらに連れてきました。」
それを聞くなり、キロは繋がれている自分の腕を壁に力強く叩きつけた。大きな音が牢屋内に響き渡った。さっきからしていた何かを打つ音も彼女が壁に腕を打ち付けた音であり、彼女の腕には無数の痣が出来ていた。
「精霊が子供を持つなんて聞いたことがない!何でそんな嘘をつくの?私の恋人を殺して、息子のシーも処分して、それでも物足りず、まだ私を痛め付けたいの!?」
作品名:After Tragedy1~プロローグ~ 作家名:未花月はるかぜ