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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「許されぬ想い」 第十話

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誠人には雄一と会いたくない気持ちがあった。それは数年前に自分が取引先として仕事をしていた事業所に雄一が経理として働いていたことと、そこの先代社長が政治家との癒着を事業発展のためにやっていたことを知っていたからだ。

誠人の父親は政治家だった。もう亡くなってしまっているが元気な時は雄一が嵌められた大物政治家のグループにも入っていた。
その関係で誠人の起こした事業が軌道に乗ったことも否めない。
父親が死んで取引が少しずつ減ってきて主力を他社に依頼しなくてはならなくなっていた。そのことが恨みになっていて良い印象を雄一には持っていなかった。

伸子は夫に助けてくれた男性が誠人であることを打ち明けた。誠人は影山誠人と言った。

「影山君か!おまえを助けてくれたのは・・・驚きだなあ、こんな偶然ってあるんだ」

「ええ、お聞きしてそうだと思いました」

「彼は俺と会社を恨んでいるからなあ・・・協力はしてくれないのは当然だよ」

「そうなの?」

「ああ、話すと長くなるから辞めるけど、仕事先だったんだ彼の会社はね。うちが仕事を回さなくなったから、他に取引先を変えて今があるようだけど昔のように儲かってはいないだろうから、恨みに思っていると思うよ」

「そんな事があったんですね。不思議なご縁ね・・・」

伸子は何か仕組まれているような感じに夫の話を聞いて受け取れた。もしあの事件が偶然じゃないとすれば・・・
誠人は自分を抱くために、いや下山と知って復讐のために仕組んだ罠だったとすれば・・・考えられないことは無かった。
浅はかな自分を恥ずかしくそして惨めに今は思えてきた。