移ろいの中で (1月9日 追加)
今、自転車は放置自転車が問題となるほど溢れ、無くなれば数千円出せば手に入る安価なものになった。それだけに作りも耐久性もよくないなと感じるが、何より物が溢れ、ありがたみもなにもあったものではなと思う。
店の真ん中に置かれた青い炎を灯すアラジンストーブが、部屋をほんのり暖めていて、彼は飲み終わったカップをソーサーに置くと窓の外に再び目をやる。車の風で巻き上げられた赤い葉がフワリと落ち、コートを着た通りがかりのサラリーマンは手をポケットに突っ込んだまま無言でそれを踏むとカシャと音がして葉は砕け舞っていった。
ドアについているカウベルがカランカランと寂しげになりドアが閉まり、男は外に出ると立ち止まりジャケットの襟を寄せ灰色の雲を見上げる。
「良い時代になったのかな?」ふと考え彼は店を後にした。
作品名:移ろいの中で (1月9日 追加) 作家名:のすひろ