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移ろいの中で (1月9日 追加)

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私は翌日仕事なのでこのまま最終の新幹線で帰る時間が近づいてきた。
調べると東京発20:00のひかり95号新大阪行きだったようだ。
東京駅、新幹線ホームまで彼女は見送りに来てくれたが、さほど話もしなかったと思う。
発車を知らせるホームの単調な電子音鳴る、きつめのパーマを掛けた彼女の表情が寂しげだった。まだ乗り込んできているお客さんが居たけどかまわず彼女を抱きしめキスをした。
それは熱い口づけだったし、彼女もそれを待っていたようだった。
今ならドラマでもそんなシーンは無いだろう。
乗車を促す放送があり、それに乗り込むとまもなくプシューと音がして新幹線のドアが閉まり窓を通して彼女の顔が見える、どうしてか・・・彼女と会うのはこれが最後なんだな・・・そう感じたのをはっきりと覚えている
一時期流行ったシンデレラエキスプレスのずっと以前のことだ。

今は引退した0系新幹線が静かに動き出し、それにあわせ追うように彼女も数歩動き出した。それが彼女をみた最後だった。私は新大阪から急行に乗り継ぎ、深夜の山陽本線を走った。名夜中の窓ガラス越しに外を見ても映るのは自分の顔だけで、ただボーッと数時間前に分かれた彼女の表情が浮かぶ。前に座っていた青年が話しかけてきてもそんな気は起きず、やがて眠ってしまった。
宇高連絡線に乗ると、元来た路線を引返し帰宅したのは翌朝6時だった。
東京駅のホームで感じたようにその彼女と二度と会うことは無かった。

何もないピュアな関係、それだけに数十年たっても色あせることなく心に残っているのだと今も思う。
枯れたすすきの野火のようにパッと燃え上がり真っ白い灰だげが思い出として残った
青春の一場面である。