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移ろいの中で (1月9日 追加)

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新幹線ホーム 午後8時の別れ

それは今から40年以上も前のこと、当時親しくなった女の子がいた。
一つ違いの彼女は東京で専門学校生、私は香川の田舎で働いていて、彼女が夏休み帰省しているとき知り合い恋に落ち、夏休みも終わりに近づき彼女は再び東京へ戻っていった。
当時は今と違って携帯電話など考えもつかず、下宿先に自分の電話などなく連絡取る方法は手紙か公衆電話だけだった。ある時仕事先の電話が鳴って出ると電話の相手は彼女だった、東京から公衆電話で香川に掛けると硬貨が滝のように落ちた時代の話だ。
「もしもし、○○…私です、声が聞きたくて電話した、もう切れます」
どこかでつながっていたい一心で彼女はダイヤルを回させたのだったが、無常にも私の次の声は彼女に伝わることなく電話は切れプープープーという信号音だけが聞こえていた。

お互いそんな思いだったのである日思い切って東京へ行くことにした。
とはいえこれまた今と違い瀬戸大橋はなく、よって夜行高速バスだの早い新幹線だのは当然なければ航空機は高くてとてもじゃなく若者が乗ることは出来ない。そこで朝早く国鉄に乗り宇高連絡船に乗り換え電車、新幹線を乗り継いで東京まで行くとても時間の掛かる旅で、着いたのは午後3時か4時だったと思う。
 新宿東口で、と場所を決めていて、時刻が近づくと向こうから学校帰りの彼女が多くの人に混じりやってくるのが見え、遠めに見える彼女は知っている明るい笑顔ではなくその表情ではな幾分暗い感じの顔だった。
それからあまり話しもせず近くにある地下の喫茶店へ行ったような気がする。
二人の交際、とはいっても今のように解放的な時代ではなくプラトニックな交際だったのだが、なぜか両方の親には反対されていた。その為かもう付き合うのをやめようとかそんな話をしたようだ。今なら数時間かけ折角東京まで会いに行って、それもお互い好意を持っていれば当然愛を確かめるべくホテルでもいくのであろう。
しかし、当時は考えもしなかった・・・