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移ろいの中で (1月9日 追加)

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当時から変わり者

国語の授業があって、その時間も終わりに近づいた頃担任の先生が
「はい、ではこの文を読んでの感想はないかな」といった。
何人かが手を上げて発表する。いずれもそれらしい感想だった。
いつもは授業などろくに聞きもしない私だがこの時はなぜか浮かぶものがあり「はい!」と手を上げる。担任はそれを見て「はい○○君」と私を当てた。がらっと椅子を引くとすっくと立ち上がり教師に私は感想をいった。
「あの、この作家ですけど、たぶん部屋には凄くたくさんの本があって、それをいつも読んでいるんですね」
そんな感想を述べた。それは文の内容には全く関係のない感想だったが教師は凄く応えたそうだ。

後日家庭訪問があった。その時は私もいて玄関で教師を向かえ、親と一緒になって話を聞いた。すると帰り際、教師が言った言葉がこの発表のことだった。
「○○君、私も長い間教師をしているけど、先日の感想を聞かされたとき驚きました。今まで文を読んであのような発想をした生徒はただの一人もいませんでした。これからもその感性を大事にしなさい」確かそんなふうに言われたと思う。
「はあ・・・」私は気のない返事をした。だって、本人は自然とイメージが沸くだけで、別段それを磨けといわれても興味もないければ、役に立つわけでもない。いわばマスターベーションの世界、夢遊の世界なだけなのだ。

それから数十年、曲を聴けば風景が流れ、生き物を見れば会話が聞こえ、絵画を見れば風が感じられるように夢遊は病に近づいたようにも感じる。
あの日「その感性を大事にしなさい」といわれ少しは磨いたかも知れないが、やはり思ったとおり何の役にも立たず、当時と変わらずただの変わり者のままである。