移ろいの中で (1月9日 追加)
すずめの夫婦
今すずめが減っているそうだ。
昔はビクトリア湖のフラミンゴのようにいっせいに飛び立つと空が暗くなるほどいたのだが、今は小さな群れしか見られなくなった。なんでも日本の住宅が良くなったせいですずめが巣を作る場所がなくなったのも一つの要因らしい。
すずめは小さい時に飼うと手乗りになって可愛らしい。小さい頃拾った雛を手乗りにして屋外で遊んでいたら驚いた拍子にどこかへ行ってしまい大泣きをした経験があり、義父は今、玄関先に落ちたすずめを飼っているが今では家族の一員になっていて、時には癇癪を起こし怒るそうだ。
害鳥といわれる嫌われ者のすずめだが、数が減っては近い将来絶滅危惧種になるかもしれない。だからというわけでもないが、娘がまだ小学校に行っていた時に作った巣箱が有ったのでそれを自宅のポールに付けるとすずめの夫婦がやって来て何度か雛を孵した。
雛が孵ると親鳥は忙しい、餌を必死で運ぶのですがここにも生存競争があっていつも食う雛と食えない雛がいる。親鳥にも性格があって一羽は用心深く巣の前でキョロキョロと何度も安全を確かめるかと思えば、もう一羽は「そんな悠長なとこしてられないわ。こっちは子育てでいそがしいのよ」とばかり巣穴にダイレクトに飛び込む。
それを見ると「ああ、ここも女性が強くなった」と関心をする。
鳥の巣立ちの瞬間というのはあんな小さな鳥でも見れば感動するもので、行こうか、止めようかと何度も挑戦しかけては止め、親鳥は餌を巧みに使い巣立ちを促す。
「えい!!」と飛ぶと、まだ飛行技術が伴わないから必死で羽ばたくけど飛べなく、勿論留まる術も知らないから障害物があると「ベタッ」とぶつかり、ポトンと落ちる。落ちるとエネルギーは無くなっていて、カラータイマーは赤が点滅状態なので暫く復活に時間が掛かるのでそこで動かなくなる。
一度など最初に巣立ちしようとする雛を後ろの雛が急かしていた時など
「早くしいや!後ろつかえてるやろ」といっているようでその雛が飛ぶと後が直ぐに続いたこともあった。
車庫の屋根と自宅の間に水切りの鉄板があるのだが、そこにつがいのすずめがやって来て鉄板とやねの間を盛んに突っつき、隙間を確認していた。それが瓦屋根で底意隙間を見つけるとすずめは巣を作る。隙間が無いか盛んに探す一羽
「ないな・・・」
隣では雌だろうかが立っていて、それを眺めていた。
「だからあの箱でいいのと違う?」
夫婦のそんな会話があったやらないやら知らないが、諦めたように飛び立った。
母のところへ行き、米の話になったとき「この米硬くておいしくない」というから「すずめにやったらいい」というと「あほ、こんな硬い米すずめが食べるかね。すずめは一番おいしいの知っている」と言われたことを思い出す。
案外人間が一番まずいもの食べてたりするものかも知れないよ。
作品名:移ろいの中で (1月9日 追加) 作家名:のすひろ