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移ろいの中で (1月9日 追加)

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彼女の表現

先日の絵画展の感想を書いていると、物事の表現というのは本当に難しいものだと感じられる。まず私には画家のように物を見る目がないものは、同じ時に同じものを見ても画家の見え方は自分のそれとは明らかに違うわけで、見えないのに加え描写力が無いのだから表せるはずも無く、ましてや感動を与えられるはずも無い。それは何も絵画に限ったことではなく、音楽でもダンスでも文章でも同じで、すべてにおいて表現は難しい。

 私はクラシックも好きで良くコンサートにも足を運ぶ。ここのところはオペラやバレエにはまり年に一度は行かないと、今年は何か忘れ物をしているようにさえ感じるようになった。幸い妻を上手く洗脳できたので彼女もオペラはいいねと言ってくれるが、悲しいかな普通のものでは満足できなくなったようである。その妻も「あの表現はないよね」と酷評を行い「いいものに理屈は要らない、いいものは無条件でいい」といい、イタリア語で意味もわからない歌を聴いて涙を流すのである。

 娘も絵画表現が好きで時々絵を描いている。長女はイラストが得意で、彼女の才能はすばらしく、描かずして表現することが出来るのでもっとこれを伸ばせばいいと思い、末っ子は描くことをしてしまい折角の良さが消えてしまっていると感じる。その末子は感受性はあるのだろうか「レンブラントはいいねえ」といいながら彼の絵を前にしてボロボロと涙を流しこの内面性は描けないとそれらしい感想を述べた。

 この『あるように感じさす』というのが難しい。かの岡倉天心が平櫛田中に言った言葉もしかりで、表すのではなくあるように感じさすということは作家として大事なことであり、忘れがちになることなのだろう。