Yと楽しい草の話
「なんだよ野村、そんなもん持ち歩いてんのか、すげーな」
「これ?こいつぁ俺の常備品だぜ。世の中のどんなネタにいつ何時会うかわかんねぇからな。ちなみにこのカバンもちょっと改造が施してある。この一部始終は俺がうまい具合に動画編集した後、ニコ動やようつべ、そして各種メディアに送り付ける。それに、さっきの話を聞いてみれば、どうやらネット上やメディアに流せば、世界中がもっとおもしろいことになりそうだしな。俺はやってみたいぜ」
「お前中々のワルだな、長岡よりタチ悪ィぞ」
「壮大な計画だなぁ」
「志は大きく持たなきゃな」
自分が馬鹿なことばっかりをやるせいであまりこんなことしないのだが、半ば呆れながら長岡を見ていた直樹は、あることに気づく。
昔こんな小説どっかで読んだかも・・・と考えながら、彼は口をはさんだ。
「ちょっといいか長岡」
「なんだよ八坂」
「お前なんでチューリップから生えてんだ?」
数瞬の沈黙。からの、
「「「「「ぇえええええええええっ!?」」」」」
「イヤ、今気付いたのかお前ら」
長岡の足は真っ赤で巨大なチューリップの花弁に覆い隠され、その根元からは例の根っこが縦横無尽に這い出していた。
「だってお前それ、ただのお立ち台かなんかだと思ってたんだもん!」
「なんでお立ち台なんて言葉知ってんだ!」
「言われてみれば仏像の下に置いてあるお立ち台っぽく見えなくもない・・・」
「あれは台座っていうんだぜ」
「つぅかお前、俺達より事態が深刻じゃねぇか」
「ふん、いいんだよ・・・俺は俺という存在を犠牲にし、この計画をやり遂げたんだ・・・おれの体なんぞ、これから起こる素晴らしい化学反応に比べりゃ、どうってことねぇさ。そう、世界は生まれ変わる!この若干馬鹿っぽくなったこの世界こそ、俺の望んでいた世界!なーにがイケメンだっ!なーにが女子力だっ!人類滅べ!新人類は俺をとりあえず崇めろ!あー彼女欲しい!イィィイイイヤッホォオオオオオオオウ!」
こいつも相当春度が高ぇや。
六人はそんなことを考えながら、クッキーをむしゃむしゃやっていた。
「だから人んちのもん勝手に食べてんじゃねーよっ!」