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Yと楽しい草の話

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近所のコンビニで少年誌を立ち読みして時間をつぶしていたが、だんだんとすきっ腹が情けない声を上げるようになったので、直樹たちは川を一つ越えたところにあるファミレスに行くことにした。
店員に見るからに怪しんでいそうな視線を向けられたが、万智がとっさに機転を利かせて「学校で未知のウイルスが蔓延して、生徒の頭に花が咲くかゾンビ化して人に襲い掛かるかという事態になったんで、休校になったんです」と言ったので、彼等は悠々と平日の昼間のファミレスで昼食を済ませたのであった。
「さっきゾンビパニック系の漫画立ち読みしといてよかったぜ」
「馬鹿だよお前ら。よく信じられたな」
「ま、謎のウイルスはともかく、花が咲いたってのは本当だからな」
「違いねぇや」
「なぁなぁ、これ、水とかやらなくっていいのか?」
「枯れたら俺たち死ぬのかな?」
「植物用の肥料って人間が食ってもあんまり体に良くないよな?」
「最悪死ぬ。何事も大体最悪死ぬんだけども」
「わからないことだらけじゃあねーの・・・」
男どもがまた頭を抱えているその斜め向かいの席に、見るからに今時を生きてるという感じの女子学生が座っていた。彼女らは直樹たちのその異様な風体を無遠慮に指差し、
「キャハハハ見てチカちゃん!あの万葉高校の男子マジありえないんだけどー」
「ほんとだーマジキモーイ、万葉の男子大体キモイけどアレマジないわ~」
「写メっとく?ねぇ写メっとく?ミクシィあげようよ~」
「テメー等勝手なことばっかり言いやがって!ぶっ殺すぞブタ!ダニ!」
一番喧嘩っ早い万智は今にも飛び掛からん勢いで女子に吠え、最終的には東野や城也に取り押さえられた。ちなみに万智の別名は、万葉高校の狂犬。
未だ鼻息の荒い万智を引っ張って会計を済ますと、直樹たちはともかく家路についた。
未だ興奮状態の万智をなんとかすべく、途中の河原に行くことにした。ここなら大暴れしようと何しようとあまり被害は出ない。
そして「この世の女なんて下半身だけ残して死んじまえ」「いやいやおっぱいも残してくれないと困る」「バカヤロー全身あってのおっぱいだろうが!おっぱいボールと結婚した奴はいたか?否!断じて否!」だの、勝手でくだらないことを川に向かって全員が言いまくった。忘れてもらっちゃ少々困るがこいつら男子高校生である。繰り返す、男子高校生である。

全員が叫び疲れると、とりあえず河原に適当に腰を下ろした。
「女って嫌な生き物だよな。人の頭に花が咲いてたくらいでよ」
「オムロン。あっ、城也のがうつった」
「人間なんて嫌な生き物だぜ。俺無人島買ってそこに住んでようかなー」
「あ、俺も俺も。みんなで一緒に一カ月一万円生活みたいなことしようぜ」
「俺銛使えるぞー。おじさんが漁師だから、夏になると魚取りに海に行ってたんだ」
「いいねぇいいねぇ」
まぁ無理だろうなと思いつつも、少年達は好き勝手言い続けた。
こういうのは言っている最中が一番楽しいもんである。予算をどうするかとか飲み水をどうするのかとか、そういうのは大人の理屈だ。そういうのを全てすっ飛ばした先にある理想の結論だけが、少年の現実だ。これらの少年は現実に生きてなどいないのだから。

作品名:Yと楽しい草の話 作家名:なさき