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山本ペチカ
山本ペチカ
novelistID. 37533
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僕とメトロとお稲荷さま

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 ボストンバッグの中にあるはずの酒が、ない。それと一緒に、コンビニで買ったレジ袋の中身の異変にも気がついた。それは、
「稲荷寿司が……ない」
 という事に、だ。
 僕は辺りを捜した。が、どこにもない。
「もしかして」
 と思い、再び神社を凝視する。
「──あっ!」
 稲荷神社を守護する二体の狐像の足元にある台座に、僕の稲荷寿司が三つずつ置かれていた。パックの上下が切り離され、それぞれ受け皿にまでなっている。
「あっ、またこっち見た」
「う~ん、やっぱりアタシはあの顔だけはダメだな~」
「そう? ぼくはやっぱりケッコーありだと思うけど」
 まただ。また、あの子供らの声。そして僕は幻覚に襲われる。何故って、それぞれ顔の右半分、下半分が風化して崩れた狐の石像が、着物をきた黒髪と白髪の双子に見えてしまったのだから。しかも、顔につけた狐のお面なんて、石像と同じく右半分と下半分が欠けている。
「もしかして、僕はお前たちと以前──」
「おーい、祐(ひろ)晃(あき)―!」
 言いかけている途中、右の歩道の先から、兄貴が手を振りながら駆け寄ってきているのに気がついた。
 よかった、ちゃんとヘルプメールが届いたんだ。
 僕はほっと一息ついて、もう一度神社へ目をやった。するとそこにはもう、あの子供らはいなくなっていた。
それはまるで──狐に化かされた白昼夢のような出来事だった。